株主至上主義を改めるべき

 一つの案は、株主至上主義といわれる強すぎる株主の権限をある程度制限すること。短期株式保有者は議決権を与えない、などの具体策が考えられます。「3カ月以上居住していないとその地で投票できない」という選挙制度と同じようなイメージです。

 これにより「敵対的買収など短期的な株主の発言力が弱まり、ステークホルダー間のバランスの取れた利益の配分が行われること」が期待されます。

アジア諸国と同じレベルの企業支援を

 もう一つは、企業支援の強化。途上国が企業支援を打ち出している以上、それと同等レベルで日本政府も企業を支援しなければなりません。よく指摘されるのが法人税ですが、法人税だけでなく様々な補助金なども企業を国内に留めるために必要なものです。

 それができなければ、水が高きから低きへと流れるように、日本企業は海外へとどんどん流出していくことになるでしょう。

 この景気後退は、大きなチャンスでもあると私は考えます。半導体紛争を思い出せば分かるように、日本が強力な産業振興政策を打ち出せば、日本の産業力向上によって被害を受ける可能性があるアメリカの産業界が苦情を唱えるというのが、これまでのお決まりのパターンでした。そのアメリカはいま、なりふりかまわず銀行の国有化を行い、自動車産業の救済に乗り出そうとしています。わが国も、今までの概念と違った、強力な産業政策を打ち出せる環境になっているのです。

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 参議院議員
1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。早稲田大学客員教授。公式ブログはhttp://www.fujisue.net
本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。