アメリカの企業はすでに国を捨て始めている

 こうした動きをもっと早くからみせていたのがアメリカです。その挙句に米企業は、生産拠点どころか、本社さえも海外に移し始めています。それも税金が安い「タックスヘブン」に。

本社を海外に移転したアメリカ企業
会社名 本来の本社所在地 移転後の本社所在地 移転年
Carnival CorporationMiami, FLパナマ1974
Mcdermott パナマ1983
Helen of TroyTexasバミューダ島1993
Triton EnergyTexasケイマン諸島1996
Global CrossingNew Jerseyバミューダ島1997
GlobalSantaFeTexasケイマン諸島1997
Tyco InternationalNew Hampshireバミューダ島1997
Fruit of the Loom ケイマン諸島1998
Playstar アンティグア島1998
PXRE Group Ltd. バミューダ島1999
TransOceanTexasケイマン諸島1999
White Mountain Insurance バミューダ島1999
Xoma (XOMA) バミューダ島1999
APW バミューダ島2000
Everest Reinsurance バミューダ島2000
R & B Falcon ケイマン諸島2000
Seagate Technology, Inc.Californiaケイマン諸島2000
Trenwick バミューダ島2000
Accenture バミューダ島2001
Foster WheelerNew Jerseyバミューダ島2001
Ingersoll-RandNew Jerseyバミューダ島2001
PwC Consulting/Monday バミューダ島2002
Cooper IndustriesTexasバミューダ島2002
Noble DrillingTexasケイマン諸島2002
Veritas DGCTexasケイマン諸島2002
出典:ハーバード・ビジネススクール デイビッド・ブルーナ氏資料

  「企業=利益を上げるもの」という認識に立てば当然の行動かもしれませんが、そこには「会社=社会の公器」といった認識はまったく感じられません。そして、わが国の企業も米企業と同じ動きを示し始めているような気がしてならないのです。すでにキヤノンやソニーといった会社の株主は、過半数が海外勢になっています。そしてこうした外国の株主には、日本政府に税金を払うインセンティブはほとんど働いていないでしょう。

  日本企業がこうした状況にあり、彼らがなだれをうって海外に移籍してしまうということがいつ起きても不思議ではないということを日本政府は理解する必要があります。理解し対応策を講じないと、本当にそうなってしまうかもしれません。