さらなる心配ごとがある

 なんらかの方法でバックアップがうまくできたとする。例えば,HDDにバックアップをしたとする。ところが,そのHDDが故障をしてしまったら,元も子もない。あるいは,使用中のノートパソコンで認識されなくなったら一巻の終わりである。

 これを多少とも避けるには,まず,どんなシステムにも接続可能な,すなわち,できるだけシステムに依存しないハードウエアが必要不可欠である。しかもできるだけ「むき出しのハードウエア」の方が望ましい。

 さらにソフトも問題である。いくらAcronisのバックアップ・ソフトが速いからといって,このソフトに依存していたら,万一,開発元が倒産した場合には,新しいソフトの供給は不可能ということになるので,再び読み出して,別の形で保存しなおすことになる。

 となると,「保存のフォーマットもできるだけ生に近い形」が安心のためには望ましい。増分だけを保存するというやり方だと,システムが正常に動作しているときは良いが,もしも何かが起きたときに復元が難しいだろう。やはり毎回フルに保存したい。

 Macの世界では,802.11n仕様のNAS(Network-Attached Storage)を使った「Time Machine」というバックアップ・システムがあるようだが,これでも短期的には良いが,データを20年間どうやって貯めるかといった用途とは全く異なったものであることを認識すべきである。しかも,手持ちのデータを全部移すといった作業をやるには,不適当な仕組みだろう。繰り返しになるが,増分だけを保存するのは,ソフトとハードへの依存が高すぎて結構怖いことである。

 それならどのような形が望ましいのか。まず,Acronisのバックアップだとなぜ1Gバイト/分といったスピードが出るのだろうか。想像であるが,できたバックアップ・ファイルを見ると,いずれも4Gバイト程度のサイズになっていることが鍵かもしれない。小さなファイルを多数セーブするのではなくて,大きなファイルを20個程度セーブすることが,転送にかかわるオーバーヘッドを減らしているようである。

 もしもこれが本当ならば,答えは比較的簡単である。ファイルを圧縮・整理し4Gバイト程度のファイルにして,それを外付けのHDDにコピーするソフトができればよいのではないか。

 JPEGファイルもRAWファイルも,ZIPで圧縮しても小さくならない。ということは,実は圧縮は不要で,単にこれらのファイルを連結して,4Gバイト程度のファイルにし,そして,外付けHDDに転送だけするような簡単なソフトがあればよいことになる。

 ただし,重要なことがある。その保存ファイルの形式はできるだけ単純で,しかも今後,長期間に渡って標準になりうるようなものでなければならない。

 加えて,4Gバイト程度の保存したファイルから,個々の小さなファイルを読み出すソフトは,別のソフトとして準備する必要があり,それもできるだけ単純なものにして,未来永劫,標準ソフトとして,すべてのパソコンのOSに組み込まれることが条件である。

 こんなバックアップ・ソフトと読み出しソフトができ,かつそれらが標準化されれば,あるハードウエアやあるソフトウエア・ハウス製のソフトに依存することもなくなるので,かなり安心できる。それで儲けようなどと思わないで,誰かがデファクトになるようなシステムを開発すべきなのである。