これらの情報を組み合わせて対象者を類型化する作業とは、様々なビジネスの根幹と言ってもよいほど大事な作業といえるでしょう。例えばマーケティング部門の仕事とは、お客の消費行動を類型化し、Aタイプの人にはB型の商品が最も訴求するという方程式を作り上げる作業の繰り返しです。人が相手なら出会い系~人材紹介、モノを扱うならマーケティング~商品企画と呼ばれます。また商材を介さずにそれらの仕事を直接顧客にサービス提供する場合にはカウンセリング~コンサルティングと名を変えますが、いずれも類型化した対象をいかに巧妙にマッチングさせるかが換金価値です。
現実社会にせり出してくる「レコメンド」
IT技術の発達でこのマッチング作業の自動化は飛躍的に進歩しました。ウェブ上にあまりにも膨大な量の情報が溢れ出て、目的の情報にたどり着けなくなりました。そこで「検索」エンジンが出現し、自動で類型化を行ってくれるようになりました。しかし情報の大洪水はそれをも上回る勢いで氾濫し、次に「関係性マイニング」エンジンの登場です。情報同士の因果関係を自動で導き出してくれます。
この一連の流れは、実は紙媒体でも生じていた現象です。タウン情報誌のかたちが『シティロード』から『ぴあ』を経て『東京ウォーカー』へと移っていった流れとは、大量に情報を羅列する型から、プロファイリングを編集側で行い、読者を類型化分類した上で提案する型への流れでした。アラカルト方式からB定食方式になり、ついに顧客ごとに本日のシェフお薦めセットを提案する時代になっているんですね。
今や情報は、あらゆる場面でレコメンデーション、すなわちお薦めセット化しつつあります。「30代の証券会社に勤める、初期の村上春樹を好む女性」とかいうように、属性や履歴などの情報を駆使して類型化し、その型に一番合ったお薦め定食を見繕ってレコメンドしてきます。裏側でシェフのやっている作業とは、対象者によく似た集団の絞り出しと、その集団に特徴的な行動パターンのマイニング。これに加えて最近のシェフは、対象者の過去をモニタリングし続けて、その個人の行動パターンを類型化するという方向にも進化しています。要するに、ある特定のお客さんの消費行動を予測するための方法は、似たような人たちの行動パターンから類推するやり方と、その当人の過去にさかのぼって、行動パターンをあぶり出すアプローチの二通りということになります。