COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 
新 誠一=電気通信大学教授
2009/05/12 09:00
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 何時の時代も就職は難題である。天職を見つける人もいれば,そうでない人もいる。教師稼業も25年弱。バブルの時代も,就職難の時代もあった。どの時代でも,学生さんにとっては始めて社会との遭遇。悲喜交々である。

 今年は,学生さんも苦労しているようである。ようやく,内々定を頂戴するものも出てきた。その意味では,来春に向けての就職戦線も折り返し点を迎えたようである。昨年までは売り手市場。そこで,国や会社からは技術者不足の大合唱。これに答えて,技術者の育成や地位向上に奔走している身には考えさせられる。

 今年は戦時である。企業の本音が露呈した。大幅に採用予定人数を絞った会社が多い。単に枠を減らしただけでなく,人物を吟味している。それだけでなく、必ず入社する人材だけに内々定を出しているようである。この煽りを喰らって,学生は即断を求められている。内々定が欲しければ,入社も決断しなければならない。昨年までは技術者不足。学生は各社から内々定を集め、それから徐に一つを選ぶという形態であった。正に様変わり。この会社側の急変にシュウカツ前半戦,学生が振り回された。

 様変わりの代表は自動車業界である。稼ぎ頭の北米がこけると赤字の山。辛うじて黒字を維持したホンダも含めて各社,採用は激減である。給料が高い経営企画の人は,北米がバブルであること,そして北米に業界の収益が依存し過ぎていたことは知っていただろう。また,1990年のバブル崩壊後,人員構成が歪になった経験から,計画的採用と言っていたことも反故になった。外から見ていると定見がない。給料に見合う仕事をしているか疑問に思える。

 定見の無さはリクルートスーツに象徴されている。就職志望学生への各社からのメッセージから判断すると,「個性的な人材」,「独創的な人材」を求めているようである。しかし,学生は一様に,黒いスーツに,黒い靴,黒い鞄でシュウカツを行っている。髪も黒く染め直し,同じ姿,同じ顔,そして同じ内容のエントリーシートを持参して,各社を訪れている。

 黒い集団を嬉々として受け入れ,その中から選別している各社の本音は「独創性」や「個性」ではないように思える。百歩譲って,黒いスーツを着た上での独創性,個性である。つまり,会社がコントロールできることが大前提で,その上で個性や独創性の花が咲けば万々歳ということが採用基準であろう。それは学生も知っている。だから,リクルートルックである。

 建前は個性と独創性,本音は俺の言うことを聞く奴。会社に限らず,経営者や,上司にもよくいるタイプである。この場合,上に立つものの力量が会社や部署の命運を左右する。変な奴を使いこなせる会社,部署は発展する。そうでなければ,無能なリーダーと心中である。

 未だ苦労しているシュウカツ中の学生諸君。会社の本音と力量を見極めて欲しい。面接が終わったあと,一人になって目を閉じて欲しい。心を静かにすれば見えてくるものがある。社名や美辞麗句の影に潜む本音が見えてくる。落とす人間には優しく,通す人間には厳しく。これは大学も会社も同じである。前半戦,会社側は慎重になりすぎた。後半戦,学生側の巻き返しを祈る。

 それにしても,シュウカツが長い。半年も一年もシュウカツをやらしておきながら,大学で何を教えろというのだろう。

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