機能性食品・消費者視点と製造者視点で課題をクリア

「コレステロール」関連機能性食品の例

　機能性食品の中でも、厚生労働省の審査・認可を経る特定保健用食品の場合、現時点で整腸・コレステロールなどの7種類の訴求効果に関する製品が販売されている。それら訴求効果別の特許出願件数を表2および図2に示した。

●表2 機能性食品の訴求効果

●図2 訴求効果別出願件数推移

　出願件数では「ミネラル・骨」がトップであるが、2000年以降の出願に限ると、「コレステロール」「血圧」「血糖」「体脂肪・中性脂肪」に関する出願推移が伸びており、他の3分野はほぼ横ばいである。

　特に「コレステロール」「体脂肪・中性脂肪」は市場も活発化しており^*2，「メタボリックシンドローム」という言葉の影響もあり、機能性食品の中でも特に注目される訴求効果であるといえよう。

　そこで、今回は「コレステロール」を取り上げ、分析事例を紹介する。

　コレステロールに関する機能性食品の特許出願件数上位10社を抽出し，10社間の出願件数・PCI値^*2のシェアチャートを作成した（図3）。ここでPCI（Patent Competency Index）とは，SBIインテクストラが開発した特許の質を表す指標である。客観的データを用いて特許出願を1件ずつ分析することで，各出願のPCI値を決定できる。PCI値が高ければ特許出願の質が高いといえ，PCI値の合計が高ければ，高い研究開発力を有するといえる。

●図3 シェアチャート（コレステロール）

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　件数トップの明治乳業が，PCIではさらにシェアを伸ばしており，他社との差を広げている。件数8位のサントリーがPCIでは2位となっており，実力の高さがうかがえる。

　次いで件数で3位だった花王はPCIでも3位，日清オイリオは件数で8位でありながらPCIでは4位とシェアを伸ばしている。この4社がコレステロール関連機能性食品の研究開発をリードする企業といえそうである。

　コレステロールにおけるこれら主要企業ごとの注力課題，強みを持つ課題を明らかにするため，出願人×課題マトリックスチャートを作成した（図4）

図4● 出願人×課題マトリックスチャート（コレステロール）

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　課題の「作用効果の向上」において，件数トップの明治乳業に次いで東洋新薬・ポーラ化成の出願件数が多いが，東洋新薬・ポーラ化成ともにPCI値が低く，明治乳業のPCI値の高さが突出している。「作用効果の向上」においては明治乳業の研究開発力が断トツといっていいだろう。しかし「製剤化・安定性」や「風味改善」といった，製品化に直結する課題に対してはPCI値が低く，これらの課題に対して研究開発力はそれほど高くないか，もしくは積極的には取り組んでいないものと思われる。

　サントリーは「新規機能・用途」のPCI値が目立っており，他社との差別化を図るための新規な素材・用途開発に注力している様子がうかがえる。「製剤化・安定性」の出願件数がトップであることから製品化へ向けた研究開発を行っている様子がうかがえるが，PCI値が伸びておらず今後の研究開発が期待されるところである。製品化に直結する課題の研究開発をさらに推進していくことで，サントリーが他社より抜きんでている「新規機能・用途」の開発が生かされ，新たな製品が生まれてくるのではないだろうか。

　特定保健用食品に限ってみると，明治乳業・サントリーはコレステロール関連の製品を開発していない。一方で，花王は「エコナ^*3」，日清オイリオ「ヘルシーコレステ^*4」と，健康油市場を牽引する代表的製品をそれぞれ有している。花王・日清オイリオともに「風味改善」で高いPCI値を有し，消費者に受け入れられやすい製品開発を行っている状況がうかがえる。このような課題に取り組むことで，高い研究開発力が生かされ市場をリードする製品が生み出された好例といえるだろう。

　今後も機能性食品に対する人々の期待は高まり，それに応じて企業の研究開発も衰えを見せないと推測される。研究開発成果を製品まで結び付けるには，機能性追求のみならず「風味改善」や「製剤化」といった他の課題に対していかにバランスよく研究開発に取り組んでいくかが成功の鍵となるであろう。

*1　矢野経済研究所「新時代を迎える特定保健用食品・機能性食品市場」（2008/3/31）。本コラムにおける市場規模に関するデータは全て上記資料より引用
*2　PCIはSBIインテクストラの登録商標
*3　エコナは花王の登録商標
*4　ヘルシーコレステは日清オイリオの登録商標