機能性食品とは,何らかの科学的根拠に基づき健康増進機能が認められる食品をいう。人々の健康に対する意識が高まり,機能性食品の市場規模は顕著な伸びを見せている。特に特定保健用食品(食品の有効性や安全性について審査を受け,表示について国の許可を受けた製品)は,2007年度にはメーカー出荷金額ベースで3600億円強にまで達しており,今後さらに市場は拡大していくものと予測される*1

 このように機能性食品市場が拡大を見せる背景には,消費者のニーズに応えられる製品を上市すべく,参入企業が競い合って研究開発を行っている状況があるだろう。ここでは,特許情報を分析することで,機能性食品の研究開発状況・開発課題を探る。

機能性食品の開発課題は何か?

 分析にあたり,1991年以降に出願された機能性食品に関する公開公報及び登録公報を抽出し,分析母集合とした(合計13130件)。機能性食品の研究開発において重視される課題を明らかにするため,まずは機能性食品全体における主な研究課題を抽出した。

●表1 機能性食品の開発課題
表1

 特許出願の公開公報に記載される【要約】における【課題】を用いて,テキストマイニングで関連特許を細分類し,機能性食品開発における主な課題9つを見出した(表1)。なお,一つの出願が複数の課題に重複している場合もある。

 これら開発課題の件数をシェアチャートに示した(図1)。

図1
●図1 出願件数シェアチャート(課題別)

 最も出願件数の多い課題は「作用効果の向上」であり,出願全体の4割以上を占めている。「機能性食品」として何らかの効能をうたって製品販売をするためには,この課題が最も大きいのは当然の結果といえるだろう。つまり,「機能性食品」の開発における出発点は「機能性素材の追求」であることがわかる。

製品開発に重要な課題は?

 では基礎研究が奏功し,健康増進機能を向上させる研究結果が得られたとして,それだけで「機能性食品」が完成するだろうか? 

 図1を見ると,「作用効果の向上」に続いて「安全性・副作用軽減」「風味改善」「製剤化・安定性」を課題とする出願件数が多い。「安全性・副作用軽減」「風味改善」については,安全な原料を用いた風味の良い製品を作ること,即ち消費者に受け入れられやすい製品開発が重視されているといえる。また「製剤化・安定性」については,効果・効能のある素材・化合物が開発されたとしても,それを安定して製品に配合させるためにはさらなる研究開発が必須であることを示唆している。さらに,「新規製造法」「製造効率向上」といった製造者視点からみた課題も浮かび上がってきた。

 つまり,機能性食品の開発課題には「消費者視点から見た課題」と「製造者視点からの課題」があり,製品が開発され上市に至るまでは,様々なハードルがあることがわかる。

「コレステロール」関連機能性食品の例