「日の丸半導体」2社の事業規模は,年間売上高2兆円を目安としたい。これくらいの規模がないと今後,グローバルな競争を勝ち抜くのは難しい。総合電機メーカーの完全子会社という立場を脱して自立経営を行い,上場する。経営トップには良い意味での独裁者(もちろん外国人でもかまわない)を迎える。半導体,エレクトロニクス産業を担う責任感と行動力を持ち,リーダーシップのある経営者が必要である。

経営統合が叶えてくれるものは何か

 結論から先に書いた。ここからは,なぜ経営統合が望ましいのかを説明していく。既に多くの業界関係者や識者が説いてきたことでもあるので,まずは簡単に列挙し,一部については後に解説を加えたい。

《経営統合のメリット》
・大規模投資に耐えうる体力がつく
・組織を一元化することで間接費の低減が図れる
・生産拠点の整理・統合によるコスト削減が期待できる
・開発投資を効率化できる
・プレーヤーが減ること,シェアが拡大することで価格決定力が高まる
・プレーヤー減とシェア拡大を背景に,装置メーカーや機器メーカーへの発言力が高まる
・電機メーカーの子会社ではなく独立組織となれば意思決定の迅速化が図れる
・独立組織になれば,自力で市場から資金を調達できるようになる

 一般に言われる経営効率化,すなわち工場再編や管理部門統合によるコスト効率化や,資金力の増強は,論を待たないところだろう。ここでは開発コストの削減効果について,日本の半導体メーカーが抱えている問題点を分析しながら,以下にもう少し詳しく説明する。

 日本の半導体メーカーのコスト構造は明白である。製造コストそのものは実はそれほど高くない。「工場出荷コストでは海外に差をつけられているとは思わない」と話す工場担当者は結構いる。海外の競合に優っているとは言えないが,大きく劣ってはいない状況だ(ちなみに,競合より製造コストを下げられない要因としては,歩留まりや品質重視の結果,マスク枚数が多くなる傾向や,複雑なデバイス構造,製造装置の購入価格が高いこと,さらには人件費の問題などが挙げられる)。海外勢に後れをとっているのは,製造コストよりも開発コストである。