タイトルからおわかりいただけるように,連載第1回のテーマは「業界再編」である。世界的にも,また日本国内でも多くの業界では再編が進んでいる。金融,自動車,製薬,造船,鉄鋼などは日本でも再編が進んだほうだろう。これらに比べて再編が遅れがちなのが,建設業やここ数年でようやく動き出した感のある百貨店などの一部小売業,そして半導体エレクトロニクスの業界だ。

 自動車の世界販売台数は2008年で6300万台前後。このうち,トヨタ自動車,米General Motors Corp.,ドイツVolkswagen AG,日産自動車/仏Renault SAS,米Ford Motor Co.と上位5社(グループ)までがそれぞれ500万台以上を販売しており,5社合計でシェアは1/2ほどになる。半導体市場に比べると寡占が進んだ状態といえるが,これによって顧客の選択肢が狭められるといった不利益が生じているようには見えない。今後は,製品戦略に失敗したアメリカのビッグスリーを中心とした二次再編が進むだろう。

 一方,半導体業界は米国,欧州ではメーカーの淘汰,再編が進んでおり,大手メーカーは各地域で2~3社しか存在せず,またそれぞれが極めて明確なビジネス・モデルや製品戦略を持っている。ひるがえって日本では,いまだ大中小2ケタの半導体メーカー(専業ではないものも含め)があり,その多くが百貨店のような品揃えで,集中を欠く経営をしてきた。中途半端な事業規模で,多くの製品群を抱えている上に,海外勢のように人件費を変動費とみなすわけにはいかないという足かせもある。これでは,巨大投資が必須の半導体業界でビジネスを成功させるのは容易ではない。業界再編はもう全く猶予のないところに来ている。5年ほど前,各社の業績が比較的好調なときに戦略的経営統合に踏み切るべきだった,というのが正直な感想だ。ここへきて半導体業界の再編は必至と盛んに報道されているが,ぜひ早急に実現して欲しいものである。今こそスピードある経営判断が望まれる。

国内半導体大手は1.5社に

 再編後は,特徴的な半導体を手掛けるロームのようなメーカー(最先端の微細化技術を必要としないオンリーワンの製品をつくるメーカー。ちなみにロームはコスト管理の優秀性でも知られている。余談だが受付にはミス京都クラスが並んでいるというウワサである)を除き,国内半導体メーカーは国内連合組と,海外勢との提携組の2社(海外提携組を0.5社と数えれば1.5社)にまとまるのが望ましい。

 これまでの経緯をかんがみるに,NEC・ソニー・東芝・富士通とパナソニック・ルネサス テクノロジの2グループに分かれるのが妥当だろう。パナソニック・ルネサス組には,さらに海外メーカーとの連携を期待したい。機器メーカーであるパナソニックがキーパーツである半導体を意のままに調達するというメリットを維持でき,新製品戦略の機密保持などに問題が生じない提携先や大株主が必要だ。