そんなことを,商社マンとして長年,世界のエネルギー・ビジネスに携わってきたエコトリビュート代表取締役の小原聡さんと話していたら,「すぐに米国経済に好影響を与えて,しかも確実にCO2削減に貢献し,なおかつみんなが儲かる方法がありますよ」と言われた。米国のオフィスや住宅の省エネ・コンサルティングだという。かなり大雑把にできている米国のオフィスの空調や断熱,電気設備を,日本のさまざまな省エネ・ノウハウで改善すれば,「20~30%程度の省エネはすぐに達成できますよ」という。このエネルギー節約分が原資となるので,だれの懐も傷まない。節約した分だけ米国のCO2排出は減る。オフィスや住宅のリフォームは雇用を拡大する。

 日本製の高性能のヒートポンプや,センサを使った個別空調システムなど,我が国からの輸出品も増える。Tech-On!のコラムでもおなじみの安井至氏が言うところの「新コタツ文明」の輸出である。日本人の約2倍と言われる米国の一人当たりCO2排出量の削減には,間違いなく貢献する。

問題はアメリカ人の環境意識

 とは言っても,アメリカ人の環境意識には不安がいっぱいだ。「たぶん,先進国の中で一番低いことは間違いないですよ」。ダラスに住む自動車ジャーナリストのM氏は,はっきり言う。「だって,あの人たちゴミの分別って知りませんから。ガラス瓶以外は全部いっしょに捨ててますし」注)

注)もちろん,米国でも分別回収をしている地域はある。あるいは,カリフォルニア州のようにゴミ処理施設で自動分別システムが利用されている地域もある。

 日本と違って広い土地を使って埋め立て処分をしているので,別に構わない。長年,豊かな大自然の中で暮らして来た彼らにとっては,ゴミの分別の必要性に迫られたことがないのだから。アルミ缶を分別回収して再利用することより,広告を使って大量消費を促し,それでコストを下げる方が合理的,と考えてきた人たちである。

 そんなアメリカ人が,この不況を機に,グリーン・ニューディール政策によって環境先進国の仲間入りをしようとしている。そんなことが可能なのだろうか。もしかしたら「環境ビジネス」には成功するかもしれないが,そのこととアメリカが環境先進国になるかどうかはまったく別問題かもしれない。20世紀の大量消費文明を作り上げた張本人で,世界の人口の5%でエネルギーの20%を消費する米国が,そんなに急に環境先進国に宗旨替えができるものだろうか。