VE(Value Engineering:価値工学)が誕生するきっかけとなったのは1947年,アメリカのGeneral Electric(GE)社で起こった「アスベスト事件」です。第2次世界大戦後の当時,アスベストは不燃材料として火災を予防するために多くの建物で使用されていました。特に防火性能を必要とする倉庫や危険物の貯蔵庫に多く使用されましたが,戦後間もないこともあり,アスベストは入手困難でした。そこで,GE社の資材担当であったL.D.Miles氏は,アスベストの「機能」に着目したのです。
アスベストの機能は「火災が起きたときに延焼を防ぐ」ことです。この目的を果たせる別の材料がないかどうかをMiles氏が専門業者に相談したところ,アスベストよりも安価な代用品が手に入ることが分かりました。ところが,GE社内の消防規定で「アスベストを使うこと」が決められているため,その代用品を使えません。アスベストを使うことが手段から目的にすり替わっていたのです。
そこでMiles氏はGE社の役員や関係者を一同に集め,新材料での防災実験を行い,代用品でも十分に防火できることを証明しました。
そして社内の消防規定を変え,この代用品を使用することで,大幅なコスト削減に成功したのです。この時Miles氏は「材料や部品の『機能』を追求すれば,大きなコストダウンが可能である」ことを発見したのです。
さまざまな分野で活用されるVE
日本にVEが紹介されたのは1955年ごろですが,企業に導入されて活動が開始されたのは1960年ごろからです。当時,貿易の自由化や景気の低迷から,コストダウンの必要性に迫られていた自動車産業や重電機産業がVEの特性と効果に着目して,主に購買部門を中心として展開されるようになりました。VEは次のような分野で活用されています。
分野 | 活用例 |
製造業 |
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建設業 |
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サービス業 |
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官公庁,地方自治体 |
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