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「ライバル会社」からの受注の舞台裏

藤野 清=藤野技術コンサルタント
2009/02/19 10:15
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 当時のダイカストマシンの給湯はすべて手汲み式だった。小さい機械の場合は片手でも扱えるが,鋳造サイクルが速い。一方,型締め力が1200tを超えるような大きな機械の場合は溶湯の量が多く,大きな柄杓(ひしゃく)を作業員が両手で抱えて給湯する。これでは非常に疲れるため,2人の作業員が交代して作業するようになっていた。これが当時の常識だった。

 こうした中,「自動給湯機を付けよ」という要求が我々のところにきた。ヤンマーディーゼル(現ヤンマー)からだ。同社から大型のダイカストマシンの注文をもらったのはいいのだが,その代わり…というやつである。これを聞いたときは受注を得た喜びよりも,「うーん」と思わず頭を抱えてしまった。省人化でコストを削減したいというヤンマーディーゼルの狙いはよく分かるが,こちらは大変だ。自動給湯機を一から開発し,品質や安全性,耐久性を整えて提供しなければならないからである。

 懸命に考えたものの,なかなか良い案が浮かばない。良い方法はないかといろいろ調べてみると,米国のリンドバーグ社という炉メーカーが,空気圧方式の給湯機を開発していることを知った。低圧鋳造と同じ仕組みのものだ。我々はリンドバーグ社からこの給湯機を購入し,ヤンマーディーゼルから受注した大型ダイカストマシンに搭載した。

 しばらくして,今度は日本電装(現デンソー)からも,500tのダイカストマシンを中心に自動給湯機を設置するように求められた。省人化と生産の安定化のためだ。だが,いつまでも外国からの購入品に頼っていたのでは,実力は付かず,利益も見込めない。そこで,我々は自分たちで給湯機を開発することにした。

 我々はリンドバーグ社の給湯機を分解して内部構造を学んだ上で,同じ空気圧を利用するものの,構造を変えた独自の給湯機のテスト機を製作して試験を行った。給湯する出口を持ち,密閉した保持炉に空気圧をかけると,一応,溶湯は出てきた。だが,その量がバラついて仕方がない。これをなんとかしようと供給する空気量を一定にしてみたのだが,炉内での加熱温度が変わると空気が膨張して給湯量が変わってしまう。

 試行錯誤を続けているうちに,今度はヤンマーディーゼルに納入した給湯機のストーク(給湯管)が湯面の近くで割れるというトラブルが発生した。熱膨張の差による熱応力が大きく,クラックが入ったのだ。当然だが,先方からは早く直せと矢のような催促がきた。我々は急いで熱膨張が小さいセラミックチューブを探したのだが,今から40年も前のこと。残念ながら,品質の良いものはまだ市場に出回っていなかった。当時の技術ではこれ以上,空気圧方式の給湯機を改善できそうにない。

 ええい,我々はやけくそ気味で高尚なことはやめ,原点に返ることにした。従来の柄杓汲みをそのまま自動化することにしたのだ。柄杓方式の給湯機である。問題はその機構をどうするかだ。

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