「まったくぅ」と憤慨しつつさらにいろいろ読み進んでいくと、典型的な「化学物質批判」にぶつかった。

年4kgの添加物が体に蓄積される?

 「農薬肥料汚染された農産物、食品添加物まみれの加工食品。統計によると、現在日本人が1年間に摂取する食品添加物の量は平均して4kgにもなるといわれています。食品添加物のほとんどは正しく体外に排泄されることが難しく、体脂肪等に吸着し、保有毒素として体内に残ると言われています」。だから「一昔前までは聞いたこともなかったような病気が、今ではどんどん増えて」いて「たとえ医学がどれほど進歩したとしてもこの勢いはとめられることはないでしょう」などという。

 ついに切れてしまった。何の統計だか知らないが、1年間に4kgもの食品添加物を摂取していて、しかもそのほとんどが体外に排出されなかったら、毎年4kg近くも体重が増え続け20年も生きていれば人の体はすべて食品添加物で占められてしまうではないか。あり得ない。「一昔前までは聞いたこともない病気」だって、その多くは昔からあったもののはず。医学が進歩したからこそ新たにカテゴライズされ、名称が付与された病気はいくらでもある。

 そのような危険な状況に日本人は置かれていると主張する一部の方たちの見解では、どうも「有機栽培野菜」ですらダメらしい。化学物質を多く摂取している人間や家畜のし尿を使う有機肥料はそれ自体が化学物質によって毒されたもので、それを吸収した野菜は穢れているのだと。だから、無肥料でなければダメなのである。それでも十分に植物は育つ。なぜなら、「元素転換」ということが行われ、不足する元素は他の元素が転換することによって補われるのだという。「その説は一般の化学では異端視されていますが、量子力学の見地からすると、その正当性が成り立ってくるそうです。それは、この説なくして現在の地球上にある全ての元素の生成の原理が説明できないからです。元素転換は常温核融合と同じく、極わずかなエネルギーでも起こり得るといわれています」とのことだ。

 こうした説明の巧妙さは、根拠がありそうな数値や科学的にみえる記述に「植物本来の力」みたいな逃げ道を巧妙に練り込み、人に何かを信じ込ませてしまうところにある。そしてさらにやっかいなのは、こうした論法を使う人のいくばくかが「こう信じ込ませることで何らかの利益を手にできる」立場にある人たちであることだ。それを読んですっかり信じ込んでしまい、無償でその応援をしてしまう人たちも沢山いる。こうしたフォロワーたちの意見は、純粋無垢な心情から発しているが故に、ときとして強い説得力を発揮してしまう。