「Green New Deal」。何と響きのよい言葉だろう。

 今、この言葉が世界を回り始めた。いや、世界がこの言葉を軸に回り始めたといってもよい。なぜ、こんなにももてはやされるのか。なぜ、このタイミングなのか。グリーン・ニュー・ディ―ルとは一体何なのか。金融危機とそれに続く大不況に喘ぐ世界の期待を一身に受け登場したグリーン・ニュー・ディ―ルについてシリーズで考えてみたい。

オバマ大統領はスイッチを押しただけ

 この言葉を一躍有名にしたのはオバマ大統領である。彼のグリーン・ニュー・ディ―ルの骨格は、ざっとこんなものだ。

(1)向こう10年間に約15兆円の公的資金を自然エネルギーの開発につぎ込む。

(2)その結果として、雇用(グリーンジョブ)を500万人増やす。

(3)米国にもキャップ&トレード(温室効果ガスの規制に関し、政府が個々の企業などにその排出枠を配分し、個々の企業などがその排出枠の一部を売買することを認める制度)を導入する。

(4) 米国のCO2排出を2050年までに80%削減する。

 急速に歴史のかなたに消えつつあるブッシュ時代のことだが、こんな話を聞いたことがある。ホワイトハウスの中では「Kyoto(京都)」という言葉はご法度であったと。なぜならば、京都といえば、京都議定書を意味するからである。クリントン時代に当時のゴア副大統領がCOP3の会議(1997年12月)が開かれていた京都にワシントンから乗り込み、決裂寸前の京都議定書を土壇場で成立させたのが京都議定書である。

 その議定書を、後任の、就任後間もないブッシュ大統領がひっくり返してしまった。それには世界の人たちもひっくり返って驚いた。2001年のことである。オバマの大転換の前には、こんな逆の大転換があったのである。そしてそれから8年間、米国は世界の気候変動を巡る国際交渉の表舞台から姿を消してしまった。