そのことの、個人的な答えが「よき観察者となる」ということであった。そして、様々な恐怖の中に身を晒しつつも勇気をもって「本当のこと」を言えるようになろうと、若き日の私は青空を見上げながら激しく決意したはずである。そして、あらゆるメディアが存亡の岐路に立つ今こそ、そのことを強く認識し直さなければならないとも思う。ところが恥ずかしいことに、そのことをずいぶん長い間忘れていたような気がする。「マスゴミ」という言葉が、それを思い起こさせてくれるキッカケになったようだ。

本当のことを言う

 もちろん、思い出しただけでは意味がない。実践しなければならないのである。よし、それを今年の目標にしよう。そう思い定めて正月休み明けのオフィスに行くと、日経Automotive Technologyの鶴原くんがヒゲを生やしていた。まだ伸び切っていないからか、何か小汚い。「いやあ、めんどくさいから剃らなかったら伸びただけですよぉ」とか言っていたが、何日経っても剃る気配はないのである。それとなく周囲の印象を聞いてみたのだが、あまり芳しくない。それで本人に「ちなみに家での評判はどうなの?」と聞くと、「ムスメからはウザいとか言われてますけど」と眉をひそめつつも、まったく改める気配はないのである。

 「気を悪くするのでは」と怖れ、婉曲な諫止を試みようとした私が間違っていた。次に会ったら勇気をふるって、ちゃんと本当のことを言おうと思う。「似合ってないよ」って。