これだけの電気量を貯められる電池だが,50kWのモータをフル駆動すると1分30秒しか持たない。そのときに流れる電流は,もしも200Vで駆動すれば250Aにもなるため,電線1本にしても大変なことになる。そのため現行のプリウスでは500Vに昇圧して使用されている。

 プリウスの不思議なところは,こんな技術がなんら燃費規制の無く,石油価格も安かった1993年頃に開発が始められたことなのである。目前の利益だけを考えていたのであれば,こんな開発が行われる訳はないのである。

 米国のビック3は,目前の利益を追求する代表選手のような企業だったから,このような投資を行うことなく,儲けの大きいSUVやF-150のような大型ピックアップ・トラックの販売を中心とした,安易な道を選択してきた。そのため,燃費のよい小型車が得意なトヨタ,ホンダなど日本の自動車メーカーは,米国で確固たる地位を築くことができたのである。

 ところが,政府が目前の利益を追求することなく,長期の開発投資を行うということは,いままで軍事目的で行われたようなとんでもない超未来技術にも,ビッグ3が挑めるということを意味するのである。現在の主戦場は当然のことながら,自動車用電池とハイブリッド技術である。その両方が関係する車がプラグイン・ハイブリッド車という訳である。

 一方,トヨタは,米国市場でタンドラ(大型ピックアップ・トラック)のような儲けの多い車種へも投資を続け,結果的に今回の金融破たんで直接的な被害を被った。そのために,プラグイン・ハイブリッドの開発などに遅れが出るのではと心配である。

日本で可能な対応策はあるか

 では,日本は何をすべきか。米国ほどではなくても,やはり大量の自然エネルギーの導入を想定し,電力供給をどのような形で行うか,そのために必要な技術とは何か,といった基本的な検討を大々的に開始すべきである。そして,その時にもっとも重要なことが「採算を度外視して投資を行うこと」なのである。