そのため電力貯蔵技術,もしくは平滑化技術は必須である。この分野の科学技術開発に相当の投資が行われると,日本の省エネ技術などは吹き飛ぶだろう。

 繰り返すが,グリーン・ニューディールの怖さは「目前の利益を度外視して」投資が行われることである。特に,電力貯蔵技術,あるいは平滑化技術に対して集中的投資が行われることが怖いのである。21世紀最大の売り物になる技術開発が,米国主導になることが怖いのである。それは,ビッグ3のトヨタ化にも使える技術だからである。

ビッグ3のトヨタ化

 この見出しは本当のところは正しくなさそうである。恐らく,ビッグ3でなくなるかもしれないからだ。自動車産業を今のまま維持することではなく,トヨタ的車作り,特にプラグイン・ハイブリッド車に関する技術に「目前の利益を度外視して」政策的支援が行われるのでは無いだろうか。

 プラグイン・ハイブリッド車の基礎となる技術とは何か。二つある。昔から存在している学問名で言えば「パワー・エレクトロニクス=強電」であり,「電気化学=電池」である。

 強電は,要するに電力制御技術である。しかし,プラグイン・ハイブリッド車では,並の工場のモータよりもはるかに強力なモータを制御しなければならない。トヨタ製のハイブリッド車は,他メーカーのものに比べるとモータが格段に強力である。プリウスですら50kW,レクサス LSに至っては165kW(224PS)というモータを搭載している。

 通常の工場などで使われている50kW級のモータのサイズは巨大である。ある資料によれば,全長75cm以上,直径45cmで,重量も実に285kgもある。これを細かく制御するのだから,その技術も相当なものである。プリウスの場合,こんなマンモスとも言えるモータと同等の出力をもったモータを,Ni-H電池が駆動する。

 プリウスの電池は,約200Vで6.5Ahという容量らしい。すなわち,1300Whである。単三型エネループが2000mAhということなので,これを650本使っていることに相当する。比較的大電力を要する電気ケトルでも,1時間使えることになる。もっとも,実際には充放電による寿命の短縮を防止するために,能力の20%しか使っていないとのことではあるが。