グリーン・ニューディール政策の中身

 まずは,グリーン・ニューディールが具体的に何を行おうとしているのか,その検討から始めたい。

 一言で表現すれば「地球温暖化対策事業という名目で,大規模投資をすること」となるだろう。具体的には二つのポイントがある。一つは自然エネルギーの大量導入であり,もう一つが米国自動車産業のトヨタ化である。

 現在進行中のポスト京都議定書の枠組みの議論の中で,2020年にどのぐらいの二酸化炭素排出削減を目標値,いわゆる中期目標として設定すべきかという問題について,先進国と途上国間での厳しいせめぎ合いが行われている。最低でも25%削減というEUの主張がある一方で 米国は,オバマ大統領候補が選挙期間中に掲げた公約が,2020年に1990年レベルに戻すという目標で,数値にすれば0%である。日本は,昨年12月18日に中期目標の数値を検討する委員会が召集されたが,現時点の情勢だと最大で20%ぐらいになるだろうか。

 先日,ケリー民主党上院議員が斎藤鉄夫環境大臣と会談した際に,日本の中期目標を25%削減とするように求めたという報道があった。ケリー上院議員はオバマ政権の環境政策に強い影響力があるとされており,ひょっとすると,オバマ政権が発足後に,2020年0%というこれまでの公約を大幅に強化し,これをてこにして大規模投資を正当化する可能性もあるのではないだろうか。

 米国に行ってレンタカーを借りる度に感心するのが「この高速道路がなんでタダなんだ」ということである。米国全土をカバーする高速道路網を整備したのは1956年以降のことで,朝鮮戦争が終わって軍需が無くなった経済に対して,長期的な刺激を与えるためであった。アイゼンハワー大統領の協力なリーダーシップがあったとされている。

 オバマ新大統領がグリーン・ニューディールでやることは,これと同様に,目前の利益は無視して,長期間にわたって経済発展を促進する効果がある政策をとることである。