1月20日,次期米大統領バラク・オバマは就任演説を行う。その中で語られる経済政策の中で,最重要ポイントになるのが「グリーン・ニューディール政策」だろう。

 ニューディール政策は世界史の教科書にも出てくるぐらい有名だが,フランクリン・ルーズベルト大統領が1933年に世界大恐慌に対処するために打った一連の経済政策である。それまでの自由市場的な政策を改め,公共事業の実施や法制による労働時間の短縮などを含む新しい経済政策であった。ポイントは「政府の関与による雇用の創出」である。

 ニューディール政策によって本当に景気が回復したのだろうか。この問題については様々な議論があって,直後に起きた第二次世界大戦の軍需がなければ,アメリカ経済は回復できなかったという評価もあるようだ。もしもこの説が正しいとするのなら,経済を復興させるには,資源を最も無駄にする戦争が最善策だということになる。

 現時点の米国経済は,まだ大恐慌時代ほどの失業率ではないが,今後,ビッグ3が消滅でもしたら,それこそ当時に匹敵する事態になりかねない。そこで,オバマ新大統領によるグリーン・ニューディールの出番,ということになるのだろう。

 しかし,このグリーン・ニューディール,なかなかの曲者である。一つは,形態はこれまでと異なるものの,やはり大量消費を目指すのではないかという疑念が残ることだ。そしてもう一つは,日本経済への悪影響という懸念である。

 前者の疑念に関しては,「経済成長というものを目指さない経済」が実現されない限り,避けられないのかもしれない。そもそも経済成長そのものは,人類にとって目標とはなり得ないものである。なんらかの意味で豊かな生活を実現するための,単なる手段に過ぎない。しかし,そのための必要条件ではありそうだが。

 後者の日本経済への悪影響だが,日本経済は当分の間,科学技術で支える以外に無いことを考えると,グリーン・ニューディールは日本の取るべき方向性と真正面からぶつかる政策になると思われる。よほど周到な準備をしないと,日本経済は置いてきぼりになるだろう。

 今回は,この後者の面からの検討を行いたい。