日本メーカーに不況の波が押し寄せている。生産ラインの休止,新規工場の凍結,設備投資の削減,人件費の大幅カット…。多くの技術者が下を向き,会社と自分の将来を案じている。しかし,何か大切なことを忘れていないだろうか。そう,「新しい事業への挑戦」だ。口で言うほど生易しいことではない。だが,いつまでも自社の既存の事業に頼るだけでは,成長に限界がくるであろうことは,誰もが心の中で感じていることではないか。 かつて,日本メーカーはそれまで手掛けたことのない新規事業を歯を食いしばって立ち上げ,世界市場に挑んでいった。そのガッツや危機感が現在の技術者には足りないのではないか──。そう問い掛ける元技術者がいる。宇部興産の元専務の藤野清氏だ。地方の一企業で旧態依然とした炭坑機械からの脱皮を図り,油圧プレス機やダイカストマシン,射出成形機など新しい製品を手掛け,高級車に採用されたアルミホイールを生産するまでに導いた。その苦闘の軌跡がここにある。
藤野技術コンサルタント