図3 インドのスーパーマーケット・チェーンのデジタル・サイネージ
図3 インドのスーパーマーケット・チェーンのデジタル・サイネージ (画像のクリックで拡大)
図4 商品を手に取ると広告映像が流れるデジタル・サイネージ
図4 商品を手に取ると広告映像が流れるデジタル・サイネージ (画像のクリックで拡大)
図5 商品を手に取るとセンサーが作動する
図5 商品を手に取るとセンサーが作動する (画像のクリックで拡大)
図6 米国ラスベガスの展示会に出展された顔認識技術の例
図6 米国ラスベガスの展示会に出展された顔認識技術の例 (画像のクリックで拡大)
図7 進化を始めたファースト・フード店のメニュー・ボード
図7 進化を始めたファースト・フード店のメニュー・ボード (画像のクリックで拡大)

リテール・デジタル・サイネージ

 さて,セルフサービス・レジが買い物客の利便性向上と店舗の差異化の面から注目される一方で,店舗を最後のマス・メディアと捉えてデジタル・サイネージを用いた広告媒体を展開する動きも進んでいます。

 広告媒体としてのデジタル・サイネージの導入はヨーロッパよりもむしろアメリカやアジアの国々で盛んです(図3)。商品をすぐに購入することができる場所で広告を流すため,売り上げに直接的な影響を与えることができると考えられています。実際に,アメリカのコンビニエンス・ストア・チェーン400店舗で実施した大規模な調査の結果,平均で26%,最大で88%もの売り上げの増加が見られました。これは,POSレジの売り上げ記録とデジタル・サイネージの配信記録とを突き合わせて,販売実績への影響を調べたものです。デジタル・サイネージによる店頭での広告の有効性を裏付けるデータといえるでしょう。

 また,単に広告を表示するだけにとどまらず,インタラクティブな仕掛けを持つデジタル・サイネージも次々と登場しています。買い物客が商品を手に取るとセンサーが作動してその商品に関連する広告映像が自動的に流れる仕組みのもの(図4,図5)は比較的早くからありましたが,最近では買い物客によって表示する広告の内容を変化させる技術が応用され始めています。ディスプレイの上に付けたカメラによって買い物客の顔を識別し,性別や年齢層,人種といった分類を基に表示内容を変更するという仕掛けです(図6)。

 インターネット広告の分野では,ユーザーの閲覧履歴に基づいて広告内容を自動的に最適化する技術が発達しています。こうした自動化の流れは,リアルな空間に置かれるデジタル・サイネージにも急速に広がってきており,ポスターや内照式看板などの旧来の媒体との決定的な違いとなっています。

 ファースト・フード店のメニュー・ボードも同様にデジタル・ディスプレイを用いることで進化を始めています。朝・昼・夕などの時間帯によってメニューの内容を変えるだけでありません。在庫状況に応じて販促をかけたいメニューを重点的に表示したり,POSレジの入力内容と連動して顧客の注文に合わせた“お薦め商品”を掲示したりするなど,高度な自動化が試みられています(図7)。