「あいつペラいよねー」「まじペラ男だね」。ギャル語です。薄くて中身のない軽薄な奴という意味です。『渋谷語辞典』(渋谷語製作委員会編)によれば、今どき「チャラい」はもう古臭いそうですから気をつけましょう。若者の国語力の低下が騒がれますが、大発展する顔文字も含めて平成ギャルたちの「国語力」はなかなかどうして。創造力がすばらしい。平安時代の女性がひらがなを創造したように、太平な時代に若い女性の作り出す基盤文化は注目に値するものがあります。

 いきなり話が脱線ですが、今回の題材は薄型パネルです。昨年末あたりからこの1年間、ディスプレイ市場の話題は薄型化に終始しました。去年の今時分は、液晶テレビが確か5cmを切ったと騒いでいたと記憶しますが、わずか1年で1cmを切るレベルにまで進化しています。薄さ比べならさらに優位な有機ELは、試作レベルながらセル単体では何と50μmまで薄くなっているそうです。紙より薄いわけで、驚くべき進歩です。

薄型化の前は大型化合戦でした。そして来年は省電力戦になりそうな気配です。高度成長期の懐かしいデ・ジャブを覚えます。あの頃は目標が明確でした。より速く、大容量で、高集積で、高出力のものを迷いなく追っていればよかった時代です。今からするとある意味楽チンな時間帯でした。薄型ディスプレイ関係の開発エンジニアにとっては、ここのところキツイながらも楽チンな数年間でした。昔懐かしの高度成長モデルだったからです。

 ハイテクマシンに備わる機能の進化にはパターンがあります。まずは基本機能。人に例えると、モータなどの筋肉系から、目、口、鼻などの五感入出力系、そして神経に相当する情報伝送系の性能数値を向上させる戦いです。価値の出しどころは徐々に皮膚に相当する意匠性・デザインに移りつつ、最後は脳に当たるインテリジェント化に行き着きます。何でも最後は半導体で賢くなって全自動化への道を突き進みます。

 これら技術陣の生み出す新機能というものが例外なく逃れられない哀しい宿命があります。店頭に並んだ瞬間から、無情なる価格低下の急降下ダイブが始まるのです。これまで何度も何度も繰り返されてきた、モノづくりのジレンマです。

 衣類やアクセサリー、家具などの耐久消費財の値付けに比べて、電化製品~自動車などの安さを常々不満に思っているエンジニアの方々は少なくないと思います。必需品であり、生活を豊かにするのに偉大な貢献をしているにもかかわらず冷たい扱いですよね。チャラチャラした「ペラい」ファッションやインテリア類は、取り立てて目新しい機能が搭載される気配もないのに、舶来のロゴマークが貼ってあるだけでずいぶん強気な値付けで堂々と生き延びています。技術者ならみな感じる不条理でしょう。