前回のコラムは「街中の広告がいつの間にかデジタル・ディスプレイに置き換わっている」という話でした。今回は広告以外のところでヨーロッパの街に増えている“アンビエント・ディスプレイ”の事例をご紹介しようと思います。

欧州では大きな市場を形成する「情報キオスク」

 情報キオスクとは,キーボードやタッチ・パネル,印字装置などの入出力装置を備えた小型の端末で,日本では ATM などがこれに該当します。ヨーロッパではこの市場が非常に発達しており,情報キオスク用のステンレス製キーボードの専門メーカーや,プリンタのメーカーも多数存在します。通常の電子機器とは異なり屋外に単体で置かれることも多いことから,独自のノウハウが蓄積され,専門の展示会も開かれています。

 情報キオスクではクレジット・カードやコインでの決済とともに,レシートやチケット,クーポンなどの印刷・発券をするものが数多くあります。最近はインターネット接続サービスを提供する端末も多く見ることができます。それらは「パブリック・コンピューティング端末」と呼ばれています(図1)。

図1 インターネット接続も可能
図1 インターネット接続も可能 (画像のクリックで拡大)

 日本ではあまり見かけないためイメージしづらいかもしれませんが,ヨーロッパでは駅やプロムナードに置かれて一般に利用されています(図2)。

図2 駅などで利用されている
図2 駅などで利用されている (画像のクリックで拡大)
図3 カメラで撮った写真を送れる
図3 カメラで撮った写真を送れる (画像のクリックで拡大)

 また,公衆電話と一体化したタイプもあります。中には,カメラを備えていて写真を送信できるような端末もよく目にします(図3)。

情報キオスクとデジタル・サイネージ

 こうした情報キオスクやパブリック・コンピューティングの端末ですが,店舗を構える必要がなく無人の場所で24時間いつでも有料のサービスを提供できることから,今後も需要は伸びると考えられます。またデジタル・サイネージの普及とともに情報キオスクが2画面化する傾向があり,操作画面とは別にサービス内容や操作方法を説明するためのディスプレイを備えたものが増えています(図4)。

図4 2画面化が進む
図4 2画面化が進む (画像のクリックで拡大)

 さらに,この二つ目の画面に広告を表示することも考えられていることから,デジタル・サイネージとの融合が進んで,ディスプレイは大型化することが予想されます。9月にオランダのアムステルダムで開催された展示会「IBC 2008」ではタッチ・パネル方式の操作画面と,裸眼立体視が可能な3Dディスプレイとを組み合わせた情報キオスク端末も出展されていました(図5)。

図5 3Dディスプレイを搭載
図5 3Dディスプレイを搭載 (画像のクリックで拡大)

無人化・自動化の波は店舗内にも

 このように,無人で決済が可能な情報端末と,使い方を分かりやすくアピールするデジタル・サイネージとの結合により,呼び込みの人員や説明員すらも不要になってきています。そして,サービスの無人化・自動化の波は店舗の中にもどんどん入って来ようとしています。

 その流れの一つが無人のセルフサービス・レジでしょう。ヨーロッパでは既にスーパー・マーケットやドラッグ・ストアなどにセルフサービス・レジの導入が進んでいます。次回のコラムでは,こうしたセルフサービス・レジを中心に,販売の現場に増えつつあるディスプレイの話題を取り上げたいと思います。