同様に、忘れがたい事件はほかにも色々ある。例えば、容器に「銀イオンで除菌」などの記載があったトイレ用芳香洗浄剤。やはり、表示しているような効果が認められないため、景品表示法に違反するとして公取委から排除命令を受けた。トイレの給水タンク上に置くと、水を流す際に薬剤が溶け出し、便器を洗浄するタイプの商品なのだが、その際、薬剤に含まれる銀イオンが便器表面のカビや雑菌を除き、増殖を抑制するかのような効能書きがあった。しかし、銀イオンの量が少なすぎ、とても効果が出るレベルにはなかったらしい。それでも一応、銀イオンは入っていたからまだいいけど。

「それでも好評だった」

 もうここまできたら笑うしかないという実に印象的な事件もある。「超音波で蚊を寄せ付けない」とうたった携帯「蚊よけ器」が、実際には全く効果がなく、やはり公取委から排除命令を受けてしまったという事例だ。何とこの蚊よけ器からは、そもそも超音波が出てもいなかったらしい。

 問題となったのは「超音波蚊よけ器」など2商品。商品の包装紙には「超音波で蚊をシャットアウト」「蚊が逃げる!」「血を吸うメスの蚊がきらう周波数の音波を発生し、寄せ付けません」との表記があった。中国に生産委託・輸入したメーカーが販売したもので、1998年からドラッグストアなどを通じ1個500円前後で約100万個販売、4億円以上を売り上げていた。しかし、公取委から依頼を受けた調査研究機関が調べたところ、鳥を入れたカゴに50匹の蚊を放って効果を調べてみたが、およそ90%の蚊が鳥の血を吸い蚊が逃げる様子もないなど、まったく蚊よけの効果がないことがわかった。一応音波は発していたが、普通のピーという音で超音波ではなかったと当時の記事は伝えている。

 そして、商品のお粗末さよりもっと驚くのは、こうした事件の際にいつも「好評で顧客からのクレームはなかった」と証言されていることである。「鰯の頭も信心から」などということわざがあるけれど、それなりにお金を払い信じて使うと、何やら効果を感じてしまうということなのだろうか。