9月半ばに10日間ほどヨーロッパを取材してきました。今回はロンドン,アムステルダムの2都市を見てきたのですが,街中の広告が密かに大きく変わろうとしていることに気付きました。

 従来からある街中の広告メディアとしては,紙(または印刷フィルム)のポスター,内照式看板(いわゆるコルトン),機械式スクロール看板などがありますが,これらのポスターや看板類が次々とフラットパネル・ディスプレイを用いたデジタル表示装置(デジタル・サイネージ)に置き換えられているのです。

変化は目に見えないところで密かに進んでいる

 ほとんどの一般通行者にとっては,照明入り看板とデジタル・サイネージとの見分けはほとんど付かないでしょう。例えば,ロンドンの地下鉄構内で撮影した下の写真では,一番手前に写っているのがデジタル・サイネージで,それ以外は内照式看板です(図1)。

図1 ロンドンの地下鉄構内の広告
図1 ロンドンの地下鉄構内の広告 (画像のクリックで拡大)

 内照式看板とデジタル・サイネージとの間に,見た目の違いはほとんどありません。しかし,機能的には大きな差があります。内照式看板では内容が不変である一方,デジタル・サイネージでは30秒ほどの間隔で次々と表示内容が切り替わるのです。先述の機械式スクロール看板はもともと表示内容を切り替える目的で登場しましたが,多いものでも10画面ほどを切り替えられるにとどまります。デジタル・サイネージではこういった制限はありません。

 さらに,デジタル・サイネージの場合は動きのある表現が可能で,見た目に心地よい視覚効果を与えることができます。また,入稿されたデジタル・データをそのまま画面に送って表示させることができるため,印刷・搬送・張り替えにかかるコストも削減されます。

図2 ロンドン・ヒースロー空港のターミナル5内の広告
図2 ロンドン・ヒースロー空港のターミナル5内の広告 (画像のクリックで拡大)

最新の空港はすでにデジタル・オンリーに

 2008年3月に完成したばかりのロンドン・ヒースロー空港のターミナル5では,広告枠がすべてデジタル・サイネージ化されており,紙やフィルムによる広告は見当たりませんでした(図2)。

図3 ロンドンの街中で目にしたショップ内の広告
図3 ロンドンの街中で目にしたショップ内の広告 (画像のクリックで拡大)

 街中のショップではさすがにデジタル・オンリーにはなっていませんが,デジタル表示式の広告が盛んに導入されています(図3)。

サービスもデジタル化が進む

 さて,ここまでは広告媒体の話ばかりでしたが,ヨーロッパでフラットパネル・ディスプレイの利用が増えているもう一つのジャンルが「情報キオスク」と呼ばれる各種情報端末です。これはキーボードやタッチ・パネル,印字装置などの入出力装置を備えた小型の端末で,日本では ATM などがこれに該当します。ヨーロッパでは ATM に限らずいろいろな種類のものが利用されており,大きな市場を形成しています。次回コラムでは,この情報キオスク端末についてのレポートをお届けしたいと思います。