趣旨
 屋外や店頭,交通機関など家庭以外の場所で,液晶パネルやPDPを目にする機会が急速に増えてきました。このような家の外のディスプレイを使って情報発信する「デジタル・サイネージ」が,新たな広告媒体としても,FPD応用の新しい柱としても,注目を集めています。街中で目にする看板を液晶パネルやPDPなどの電子ディスプレイに置き換えれば,コンテンツを書き換えたり,動画を流したりできるようになります。これまで普及の妨げになっていたディスプレイや通信のコストも,急速に下がってきました。
 このデジタル・サイネージに象徴されるように,ディスプレイは生活空間のあらゆる場所に組み込まれ,人々が意識せずにディスプレイを利用するようになるでしょう。家の外に限らず家の中でも,壁や窓,机など身の回りにある日常品が,必要なときにディスプレイとして機能する。ディスプレイは,そんな“アンビエント・ディスプレイ”へ進化するという方向が見え始めています。そのようなトレンドを予感させる世界中の事例をデジタルサイネージ総研所長の坂東穣氏に紹介してもらいながら,未来のディスプレイの姿を探っていきます。(Tech-On!編集)
坂東 穣(ばんどう・みのる)
デジタルサイネージ総研所長,一級建築士
京都大学工学部機械工学科および建築学科を卒業。在学中に1年間ロータリー奨学生としてイタリアのミラノ工科大学に留学。妹島和世建築設計事務所を経て独立。2004年度「JCDデザイン賞」において審査員特別賞(原研哉賞)を受賞。一級建築士。2005年よりBOOSTARS取締役としてモバイルWEBサービスの開発を主導。2007年からJAMMU代表取締役として「デジタルサイネージ総研」を立ち上げる。海外取材を軸に日本国内でのデジタル・サイネージの普及・発展のための講演・執筆・コンサルティングを行うほか,都市や建築・アートといった文化的側面からデジタル・サイネージの可能性について独自の情報発信を行っている。(デジタルサイネージ総研のウェブサイトはhttp://digitalsignage.co.jp