世の中は難しい。原材料高に,環境問題,少子高齢化と暗中模索である。政治は混迷し,経営者は方向性を失っている。一般の方々は給料の削減と物価高のダブルパンチである。もっとも,難しい問題の解決は常に技術者が担ってきた。海外から評価されているのも日本の製品であり,ものづくりである。トヨタ,ホンダ,ソニー,パナソニックなどの名称は浸透しているが,外交も,政治も,金融も,観光も存在感が乏しい。現在,不況対策,安全・安心の推進が皆さんの重大関心事である。これらの問題の最終的な解決も技術者の双肩にかかっている。

 どうせ最後に付けが回ってくるなら,先に宣言してしまったほうが気持ちは良い。そういうわけで,現在東京ビッグサイトで開催されているManufacturing Open Forum 2008(MOF2008)でエンジニアが日本の将来を背負って立つという「ものづくりサミットMOF2008宣言」を発信した。ご賛同およびご支援をお願いしたい。

 さて,本題。今,技術者が直面する問題として少子高齢化による技術者不足と技術継承の問題がある。加えて,年金の資金不足の問題である。これらの問題の根本的な解決は,“技術者には死ぬ間際まで働いてもらう”,という以外に見当たらない。

 現在,年金は65歳から支給される。日本人男性の平均寿命は80歳程度である。女性は,もっと長い。つまり,15年程度,年金暮らしをすることになる。しかし,この資金が不足しているようである。それなら,60歳や65歳で退職しないで,いつまでも働いていただこうということが趣旨である。その間,高収入があるのなら逆に年金資金を納めてもらってもOKである。

 主張は単なる定年延長,いやいや定年廃止である。こうすれば,労働力不足も補える。製造科学技術センターが,今後の日本の製造業のあるべき姿を検討した「ものづくり技術戦略ロードマップ」をまとめている。ここでの議論でも,経験豊富な方と女性を活用することで労働力不足を補えるとまとめていただいている。

 男は仕事である。別に男女差別をするつもりはない。しかし,男は子供を産めない。そのため仕事に生きる意義をみつける傾向が高い。実際,定年退職後にアイデンティティを失う男が数多くいる。中にはボランティアでも働きたい人がいる。それなら,人材を無駄にしないで,技術継承で活用すべきだろう。

 いつまでも先輩がいるとうっとうしい。確かに,先輩が君臨していると後継者が育たない。しかし,現実の会社では50台半ばでラインからはずれる人は多い。権限は若手,年長者は補助という体制が出来ている。給料は現役時代の半分もあればOKではないか。年金では,この水準が危ないそうである。もちろん,優雅に年金暮らしをしたい人はハッピーリタイヤメントでのんびり暮らせばよい。まだ,矍鑠(かくしゃく)として働きたい人は,働いて給料をもらえばよい。人生で住居費に続いてお金がかかる子育てが終われば,給料が少なくても大丈夫ではないだろうか。

 世の中,問題の本質を直視して対策を講じなければいけない。それを逃げると,消費税値上げだ,年金保険料の税金化だと迷走することになる。技術も同じである。もって,自戒としたい。