『「婚活」~』によれば、日本人が今結婚しにくくなったのは、かつて江戸時代に職業恋愛の自由がなく、家業を継ぎ、家同士の決めた相手と結婚しなければならなない時代が続いたが、これが近世になって変わったためだという。家は国家の基本と、徳川幕府はきびしく自由恋愛を禁じた。禁が解けて自由恋愛が始まっても、自然な恋愛などできるはずがない。だから、日本では美男美女の優位を超えて、結婚に人生を賭けた人々だけがそれを手にするようになった。80年代は、恋愛マニュアルが多くの若者に読まれたものだ。

 オリンピックのメダルも、本来の肉体的能力を超えたところにある。カラダに恵まれなくても手足が短くても、あらゆる知恵を絞ってメダルを獲りにいく。その「金活」をやったものだけに女神は微笑みかける。帰ってくればプロ野球が待っていて、そっちの本業で食っている星野ジャパンに、最初から勝ち目はなかったのである。

 ボルトが規格外の欽ちゃん走りで圧勝し、水泳のフェルプスは8個も金メダルを獲った。ここまで圧倒的に強ければ太刀打ちのしようもない。けど、落胆することはないだろう。ボルトやフェルプスに負けないくらい、金活に賭け奮闘した女子ソフトやバドミントンのスエマエ、フェンシングの太田選手らの奮闘は感動的だったのだから。

著者紹介

神足裕司(こうたり・ゆうじ)
1957年広島生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒。筒井康隆と大宅壮一と梶山季之と阿佐田哲也と遠藤周作と野坂昭如と開高健と石原裕次郎を慕い、途中から徳大寺有恒と魯山人もすることに。学生時代から執筆活動をはじめ、コピーライターやトップ屋や自動車評論家や料理評論家や流行語評論家や俳優までやってみた結果、わけのわからないことに。著書に『金魂巻』『恨ミシュラン』あり。