だが、日本勢はアップルやグーグルのようなビジネスモデルになかなか取り組まないように見える。理由の一つはアイデアを出せないことだろう。優秀な生産システムによって、性能が高品質の製品を作ることは合議制でできた。が、新しいコンセプトを生み出し、市場を変革させるようなビジネスモデルは強い個性、それもトップダウンから生まれる。言い尽くされたことかもしれないが、彼我の差はやはりある。さらに、新しいビジネスモデルを思いついても、それをうまく実現できない問題もある。事業部の壁、既存ビジネスとの兼ね合いという、これまたいつもの理由である。

 例えば、こんな製品とサービスはどうだろう。iPod touch に対して iPhoneがあるように、PSPに対してPSP Phoneという製品コンセプトがあり得るのではないか。ソニーはグループの中に、ゲーム機と携帯電話の両事業を抱えている。PSPの知名度と優秀なハードウエア技術が揃っている。PSP Phone に3G機能か次世代高速通信モジュールを積めば世界は大きく広がるのではないか。

 PSP Phone には当然、iPodにお株を取られた音楽プレーヤーの機能とサービスを盛り込むことになる。アップルはゲーム機を持っていないから、ソニーにアドバンテージはある。PSP Phoneは、通話、ゲーム、音楽、さらにはビジネスアプリケーションのプラットフォームになり得る可能性を秘めていると思う。

 ただし、いくら強力なCPUを積み、小型化の粋を極めても、ソフトウエアやサービスがついてこないと始まらない。一番大切なのは PSP Phone そのものではなく、PSP Phone の向こう側に広がるワクワクする世界を、サードパーティの力を借りてどう創るかである。

シャープの逆張り戦略に期待

 もう一社、私が興味を引かれる会社にシャープがある。シャープは逆張りの戦略を得意とするようで、他社が中国進出を競っていた頃、国内に留まり液晶工場を建設した。ここへ来て、NECをはじめとする日本企業が中国の携帯電話機事業から撤退したのに対し、シャープは高機能携帯電話機による中国進出を発表したりしている。もちろん、やみくもに他社と違う戦略をとっているわけではなく、「今までにない付加価値の創造と提供を可能にすること」を考えて他社と異なる道を選んでいる。