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 ソニー・ショック以前,世界はソニーの一挙手一投足に注目していた。大型イベントが開かれれば,ソニーのトップが基調講演の壇上に招かれることも珍しくなかった。世界のエレクトロニクス産業がデジタル家電の重要性を認識したわけだ。現在も,デジタル家電への注目度は高い。ソニーに代わる主役は誰か。松下電器産業やシャープの健闘も目覚しいが,世界の目が向けられているのは日本企業ではない。韓国Samsung Electronis社だ。同社は部品事業でも機器事業でも,日本企業の勢いをしのぐまでに成長した。日経エレクトロニクスが実施したアンケート調査「研究開発力で急速に力を伸ばしている企業はどこですか」においても,海外メーカーとしては他を寄せ付けぬ首位の座に就いている。

Linuxは着実に普及,ロボット・ブーム沈下

 2位のLinus Torvalds氏が開発したLinuxは,オープンソース・コミュニティーの開発体制に支えられ,着実にはぐくまれた。今では企業の情報システムの領域でも,また組み込み機器の領域でも,一定の地位を確保している。2006年には,ワンセグ対応の携帯電話機にも実装された。携帯電話機のソフトウエアは,指数関数的に規模が大きくなっている。今では数百万行に達し,ソフトウエア開発の工数は1万人・月にも達する勢いだ。こうしたソフトウエア開発の効率化を目的にLinuxが注目されている。LinuxといえばUNIXである。ワークステーション用だった技術が,携帯電話機のような小型の電子機器に搭載されるほど,テクノロジーのダウンサイジングは加速している。

 Linuxの重要性は依然として変わらないものの,同じアンケートを実施すれば,もはやLinus Torvalds氏の名前は挙がらないかもしれない。ソフトウエア技術者の関心はOSの技術論争ではなくなりつつある。よりアプリケーション・ソフトに近いレベルの開発者の名前が挙がることだろう。

 ホンダの「ASIMO」を筆頭に,ソニーのロボット「AIBO」や「QRIO」も当時,大きな話題を振りまいた。ロボットの歩行は大きな技術進歩といえる。ただ,鉄腕アトムのような知性を期待するわけにはいかない。歩行が可能になったことで,ロボットは愛らしさを手に入れたが,人の生活を変えるところまで進化するのには時期尚早だった。結果的に,エンターテインメント・ロボットの市場を築くには至らなかった。ソニーは2006年になって,ロボット事業からの撤退を宣言,一連のブームは下火になる。次なる大きな飛躍を実現するには,さらなる研究開発が欠かせない。逆にいえば,エレクトロニクスの技術が成し遂げるべきことは,まだまだある。


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