1999年2月,NTTドコモは携帯電話によるインターネット利用サービス「iモード」を始めた。

1999年2月22日に始まった「iモード」の初代端末「ムーバ F501i」を持つ広末涼子さん。1999年1月25日のCM披露イベントにて。
1999年2月22日に始まった「iモード」の初代端末「ムーバ F501i」を持つ広末涼子さん。1999年1月25日のCM披露イベントにて。 (画像のクリックで拡大)

 「iモード」の開発を振り返ってコロンブスのアメリカ大陸発見になぞらえたのは,iモード開発の立役者の一人である榎啓一氏(現・NTTドコモ東海 代表取締役社長)だ。これは,同氏が米国のテレビ局の取材を受けた際にとっさに思い付いたということだが,絶妙な例えだと感心した。

 iモードに限らず,新技術や新サービスの開発はまさに航海そのものだ。大陸の存在がひとたび証明されれば,次から次へと海を渡るものが現れる。後発者は,大陸の方角や距離が分かっているのだから,リスクは少ない。しかし,最初にその大陸の存在を証明するのはとても難しい。

図1 端末別のインターネット利用者数推移 2005年に,携帯電話機からのインターネット利用者数が,パソコンからのインターネット利用者数を抜いた。総務省の「通信利用動向調査」より。
図1 端末別のインターネット利用者数推移 2005年に,携帯電話機からのインターネット利用者数が,パソコンからのインターネット利用者数を抜いた。総務省の「通信利用動向調査」より。 (画像のクリックで拡大)

 1999年当時のエレクトロニクス業界における「新大陸」は,携帯機器によるデータ通信だった。このころ多くの機器メーカーや通信事業者が,いわゆるモバイル・データ通信市場を開拓しようと小型の専用機や無線機能を内蔵したパソコンを続々と製品化していた。しかし,いずれも売れ行きは芳しくない。「もしかしたら,『大陸』は存在しないのではないか…」。そんな空気も漂い始めていた。そこに登場したのが,ブラウザー・ソフトウエアやインターネット用の通信機能を盛り込みつつ,普通の携帯電話機の姿をしたiモード端末だった。

 その後の携帯電話によるインターネット・サービスの普及が目覚しいのは周知の通りである。総務省によるインターネット利用者の調査によると,国内で携帯電話機など移動端末から利用するユーザーの数は2005年末に6923万人に達したという。6601万人とされるパソコン利用者を初めて上回った(図1)。世界的に見ても,携帯電話機からインターネットを利用する人の数は増え続けている。

端末の進化が加速

 端末開発の観点からも,iモードが生まれた1999年は大きな転換点だった。この年を境に,携帯電話機は「電話機」から各種のソフトウエアを詰め込んだ「コンピュータ」へ変貌した。端末の高機能化で買い替え需要に火が付き,ここ数年,携帯電話機の国内出荷台数は年間4000~5000万台で推移している。国内の携帯電話ユーザーの数は9000万。平均すると2年程度で買い換えている計算だ。