両社の製品に対する関心は当初,消費者よりもエレクトロニクス業界内で高かった。家庭用デジタルVTRの最初の製品だったからだ。多くのエレクトロニクス・メーカーが,両社の製品に対する消費者の反応に注目していた。
実は,アナログVTRに代わる次世代製品として多くのエレクトロニクス・メーカーが1970年代からデジタルVTRの開発に取り組んでいる。既に1980年代末には技術は実用レベルに達しており,まず業務用として製品化されている。ところが家庭用の製品化となると慎重になるメーカーが多かった。消費者の心をとらえる特長が,なかなか打ち出せなかったからだ。デジタル記録にすれば高画質化を図れるものの,なかなか消費者にはこれを訴えにくい。高品質のダビングが可能という特長もある。だが著作権保護の問題に決着がつかない限り製品の特長としてはうたえない。
結局,こうした問題を解決する決め手がないままに市場に登場したDV方式のデジタル・ビデオ・カメラは,デジタル・スチル・カメラのようにメーカーや消費者を巻き込んだ大きなブームを起こしてはいない(図2)。「8ミリビデオ」や「VHS-C」など,従来のアナログ方式のビデオ・カメラに置き換わる形で市場を獲得している。
エレクトロニクスの技術は常に進化する。だが,これに合わせて新たな用途や利点をユーザーに提供できないと,なかなか新規市場の開拓にはつながらない。特に民生用機器の市場では単なる「技術」をセールスポイントにするのは難しい。同じ時期に市場に登場したデジタル・スチル・カメラとデジタル・ビデオ・カメラの後の市場動向は,これを明確に示している。
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