1984年,GUIを用いるパソコン「Macintosh」を米Apple Computer社が発売した。

 最初のコンピュータとされる「ENIAC」が誕生してから60年(表1)。この間,優れたアイデア,技術,製品が次々と生み出されてきた。その中でも,Alan Kay氏が1968年に発案した「Dynabook」構想は,「パーソナル・コンピュータ」の原点といえるもので,特筆すべきアイデアの一つである。

表1 コンピュータの歴史 初のコンピュータと位置付けられることの多い「ENIAC」の誕生から現在まで60年。
表1 コンピュータの歴史 初のコンピュータと位置付けられることの多い「ENIAC」の誕生から現在まで60年。 (画像のクリックで拡大)

 Kay氏は,GUI(Graphical User Interface)を備え,子どもから老人までが簡単に使える,持ち運び可能なパソコンを未来のコンピュータとして考案した。まだ,4ビットのマイクロプロセサすらない時代のことである。同氏は,米Xerox社のPalo Alto Research Center(PARC)で開発を続け,1973年に「Alto」という試作機を作った。性能やサイズの面で見ると理想からは程遠かったが,その後も開発を続け,現在につながる多数のアイデアを実現してみせた。ビットマップ・ディスプレイ,マウス,マルチウインドウ――。GUIの誕生である。

 Xerox社が生んだアイデアは,その後10年を経て「Macintosh」(米Apple Computer社)となり,世の中に大きな衝撃を与える。1984年のことだ。

誰でも簡単に

 GUIは,コンピュータになじみのない人でも,簡単に,短時間で使えるようにするためのユーザー・インタフェースである。

 例えば,「机の上」「文書」「ごみ箱」「フォルダー」といった実際のオフィスにあるものを模した絵文字(アイコン)をビットマップ・ディスプレイ上に表示し,ユーザーはそれをマウスでつかんで移動させたり,クリックしたりする。

 こうした直接的な操作感や,異なる作業を複数のウインドウを立ち上げて実施するマルチウインドウの考え方は,前述したように,1970年代にXerox社のPARCが中心となって生み出した。しかし,コンピュータの処理性能が足りなかったり,ハードウエアが高価になりすぎるといった問題によって,コンピュータの普及機に搭載されるには至らなかった。