暗号に新世界をもたらした論文
そこで,1978年9月4日号の暗号特集では,DESやRSAなどの暗号アルゴリズムを解説することにした。その時を思い出すと,DESやRSAの暗号アルゴリズム以上に,暗号システムのアーキテクチャに魅せられ,米国技術の底力に驚いたものだ。
まずIBM社の暗号システムのアーキテクチャに感心した。その当時,コンピュータ関連の新しいアーキテクチャはことごとく同社が構築していたが,暗号システムも例外ではなかった。暗号システムの運用上のキーはまさしく,暗号鍵/復号鍵の管理にかかっている。その鍵管理機構をシステマティックに巧みに作り上げていたのだ。
もっと感動した技術となると,やはり公開鍵暗号方式である(図2)。その当時としては,革命的な概念のアーキテクチャであった。米Stanford UniversityのDiffieと Hellmanが考案し,1976年の学会論文の中で発表した。従来暗号の課題であった鍵配送をクリアし,その後,認証やデジタル署名を実現する基盤にもなったのである。
その論文は,公開鍵暗号の仕組みを明らかにしていたが,具体的に実現する暗号アルゴリズムは宿題としていた。論文に触発されて,公開鍵暗号を実現するアルゴリズムの発表が相次いだ。その一つがRSAであったわけだ。
このように米国主導で始まった暗号技術であったが,日本の研究者も1980年代以降は大いに活躍した。DESやRSA暗号の問題点を指摘したり,代替となる新暗号アルゴリズムを開発し,国際的にも貢献してきている。
参考文献
1) 田中,「鍵なしではまず解けなくなった最近の暗号方式」,『日経エレクトロニクス』,1978年9月4日号,no.194,pp.68-103.
暗号技術の現在
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