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【電子産業史】1980年:RISCの登場

旋風を巻き起こした新アーキテクチャ

2008/08/13 09:00
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1980年,RISCに関する初めての論文が発表された。

 アーキテクチャは世につれ,世はアーキテクチャにつれ――マイクロプロセサの命令セット・アーキテクチャや内部構造の歴史を振り返ると,こんなフレーズが頭をよぎる。

 ここでいう“世”とは,半導体やソフトウエアの技術を指す。マイクロプロセサは,半導体やソフトウエアの進歩をテコに性能向上の道をひた走ってきた。逆にマイクロプロセサの性能向上とそれに伴う適用分野の広がりが,半導体やソフトウエアの技術開発に刺激を与えた。つまり,マイクロプロセサのアーキテクチャと半導体技術,ソフトウエア技術は互いに影響を及ぼし合いながら,誕生から35年にわたり進展を続けてきたのだ。

 もちろん,この35年がずっと平坦な道のりだったわけではない。マイクロプロセサ・アーキテクチャの変遷を見たとき,そこには幾つかの節目があった。その一つが本稿で取り上げる「RISC(Reduced Instruction Set Computer)の登場」である。それまで主流だったCISC(Complex Instruction Set Computer)との間で,どちらのアーキテクチャが優れているのかという,熱い論争を巻き起こした。

“10MIPS”が殺し文句

 RISC誕生の背景には,高級言語指向を強め,複雑の度を増していたCISCアーキテクチャへの反省があった。CISCは,高級言語向けの命令や,複数の処理を1命令で実現する複合化命令をハードウエアで実装することでソフトウエアの負担軽減を図った。しかしハードウエアが複雑になったために,LSI設計が難しくなり開発期間の長期化を招いた。高速化(動作周波数向上)の足かせになるという問題も生じた。

 そこで,CISCの考え方を180度変えたのがRISCである。実装する命令は使用頻度の高い基本的なものに限り,複雑な処理はこの基本命令の組み合わせで実現する。つまり,ソフトウエア(コンパイラ)に負担をかけてもよいからハードウエアを単純化しようというアプローチである。


図1 「SPARC」チップ 米Sun Microsystems社の「Sun-4」に搭載された。米Fujitsu Microelectronics社の2万ゲートのゲートアレイを使った。動作周波数は16.67MHzで,性能は公称10MIPS。製造技術は1.5μmルールのCMOS。 (画像のクリックで拡大)

 RISCアーキテクチャは,1975年に開発が始まった米IBM社のミニコン「801」に端を発するが,この時点から「単純化」がキーワードだった。開発に携わったJoel Birnbaum氏(現在は米Hewlett-Packard社のSenior Technical Advisor)は本誌のインタビューにこう答えている。「801のアーキテクチャは,デジタル交換機に向くパワフルで単純なコンピュータの開発を目指した結果の産物だった。Reduced Instruction Set Computerではなく,Reduced Complexity Computerを作りたかった」と。

 801のコンセプトを引き継ぐとともにRISCの優位性に理論的な裏付けを与えたのが,米University of California,Berkeley校教授のDavid Patterson氏と米Stanford University教授(現・学長)のJohn Hennessy氏である。1980年から1981年にかけて相次いで論文を発表した。前者の研究が米Sun Microsystems社の「SPARC」,後者が米MIPS Computer Systems社の「R2000」につながった。とりわけインパクトが大きかったのがSPARC(図1)だ。公称10MIPSをうたい文句にエンジアリング・ワークステーション市場に打って出るとともに,RISCブームの火付け役となった。

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