LSIの専用化と汎用化
妥協点を示した実例に注目

日経エレクトロニクス表紙

 本誌はこの年,創刊5周年を迎えた。前総理大臣だった田中角栄氏の逮捕に発展する「ロッキード事件」が2月に明るみに出るなど政局は大混乱に陥ったが,10月に日本ビクターがVHS方式の家庭用VTR第1号機「HR-3300」を発売するなど,産業界は着実な歩みを進めていた。「連写一眼」のキャッチ・フレーズで有名な一眼レフ・カメラ「AE-1」をキヤノンが発売したのも,この年である。マイクロプロセサを搭載し,自動露出などの自動化機能を普及機に持ち込んだ。

 この1年で,読者が最も参考になったと評価した記事は,東京芝浦電気(現・東芝)が開発した汎用入出力プロセサ・チップ「T3444」に関する論文だった。実質20ページを超える大作である。T3444は,プログラムを格納するマスクROMの変更を可能にすることで汎用化を実現したチップで,フロッピー・ディスク・コントローラなど複数の用途に採用された。最も読まれた記事の一つである12月13日号の「技術速報」は,衛星通信などで音声信号の符号化に使う適応型mM符号器をNEC 中央研究所が開発したことなどを報じた。

1976年に読まれた記事 BEST 3
  1. 海外技術速報(8月9日号)
  2. 技術速報(12月13日号)
  3. 新製品:海外(8月9日号)
1976年に評価が高かった記事 BEST 3
  1. マイクロプログラム制御方式による汎用I/Oプロセサ・チップの開発(12月27日号)
  2. ガラスやセラミクスに金属が直接付くハンダ技術(10月18日号)
  3. 高速フーリエ変換とチャープz変換を巡って(9月20日号)

「読まれた記事」「評価が高かった記事」は読者アンケートの結果による

本記事は,2006年7月に発行した日経エレクトロニクス創刊35周年特別編集版「電子産業35年の軌跡」から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります

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