1971年11月,米Intel社は米Electronic News誌の広告で世界初のマイクロプロセサ「4004」を発表した。

 「米インテル社がマイクロコンピュータと称される初めての製品4004を出して,世の注目を集めたのは1971年であった。その後の,マイクロコンピュータ技術の急速な発展と,広範な分野に適用されていった姿は,実に驚くばかりである。図1を見ていただきたい。今回本誌が調査したものだけでも,20種を超える機種が現在入手可能な状況にある。現在米国だけでなく国内においても半導体メーカーのほとんどが何らかのマイクロコンピュータを手がけるに至っている。
 本誌が初めてマイクロコンピュータの解説を行ったのは1972年10月である。そこで「わずか1年ばかりの間にこれだけ多くのマイクロコンピュータ・システムが市場に現れたことは,とりもなおさず今後の爆発的な“マイクロコンピュータ時代”の到来を暗示していると言ってよかろう」と述べたことがまさに現実の姿となった。また,奇しくも,その解説時点が第2世代マイクロコンピュータの開発開始時期でもあった。「マイクロコンピュータ時代」はその翌年(1973年末)に第2世代マイクロコンピュータ(インテル8080,東芝TLCS-12)の登場という形で開かれた。…」1)

 以上は,筆者が本誌1975年5月19日号に掲載した記事1)の書き出しである。

図1 各種マイクロコンピュータの開発の状況とおよその開発時期 1)
図1 各種マイクロコンピュータの開発の状況とおよその開発時期 1) (画像のクリックで拡大)

「汎用LSI部品」の道筋示す

 プレーナ技術による集積回路(IC)実用化を受け,1960年代,電子機器設計者とコンピュータ設計者の関心はIC化にあった。ICとマイクロプログラム制御方式を採用した米IBM社の「System/360」の発表(1964年)は,コンピュータ設計者に大きなインパクトを与えたし,電子機器設計者も集積回路技術の進展を受けて1960年代後半,IC部品の積極導入に動いた。とりわけ電卓分野で,シャープはIC電卓に続き,1969年には世界初のMOS型LSI電卓を出した。また翌年米Intel社は1KビットDRAMを発表している。

 「1970年代はLSIの時代」という認識は当時の開発者間で広がっていたが,1970年前後で実際にLSI化された電子機器はさほど多くはない。論理回路を大規模に集積すればするほど一般的には専用性を強め,汎用性・柔軟性が薄れる。現実的にLSI化を図るには,論理回路をどうモジュール分割するかが重要となる。