ビンテージ品になる資格

 最近のデジカメの進歩は大したものだ。しかし,昔のデジカメの写りはどんなものだったのだろう。こんなとき,専用電池で動作する機種だと,電池が完全にへたっている場合には,動作をさせることもできないだろう。

 手元に富士フイルムの「DS-10」というデジカメがあるが,これは1997年に売り出された機種で,単三電池で動作する。メディアは「スマートメディア」だが,こちらは捨てないでとってあるので,あの頃のデジカメはこんな画像が取れたのだ,と懐かしむことができる。図2に昨晩撮影したDS-10の写真を示す。分解能は640×480に過ぎない。画素数で言えば,たったの31万画素である。このデジカメが,3万9800円だったのだ。

【図2 富士フイルムのDS-10でこの原稿のために撮影した画像】11年前に発売された31万画素のデジカメだが,今でも問題なく使える。
【図2 富士フイルムのDS-10でこの原稿のために撮影した画像】11年前に発売された31万画素のデジカメだが,今でも問題なく使える。 (画像のクリックで拡大)

 最近のモデルでも,例外はある。リコーのGR-D系,GX系では,専用リチウム電池以外に,単四電池を2本使えば,一応動作する。これなら,本体がしっかりしていれば,孫の代まで使えるのではないか。それとも本体が壊れるのだろうか。

 このようないつまでたっても部品がなんとか手に入る機種は,ビンテージ品になる資格があるが,iPhoneのように,電池の交換ができないような機種は,10年後には確実にゴミである。当時のデジタルガジェットはこんな性能だったのだ,といった楽しみ方はできない。最初からビンテージになる資格が無い。

 電池が交換できる機種でも,10年後に新しい電池を入手するのは困難かもしれない。となると,リチウム充電池も標準化をすべきではないか,と思われる。携帯電話であれば,電圧は大体は3.7Vだろうから,メーカーが相談することによって標準電池を決め,それを採用することにすればよいだろう。デジカメも同様である。そろそろ,リチウム充電池の共通規格化を検討すべきである。

 もしも,世界でもっとも売れている携帯であるNokiaと,共通仕様の電池を使うことができれば,いつになっても,世界のどこかで,多分中国製の電池が入手できるだろう。

 今後10年ぐらいで,「持続可能性」という思想がさらに普及するだろう。長寿命製品は,持続可能性のいくつかの条件のうち,少なくとも一つを満たす。明らかに,iPhoneは長期間使える機器とは言い難い。かなりささやかなことであってもこの弱点を突くことは,国産ケータイ強化戦略の一つの方向だろう。