郵便配達は電気自動車で

 私は,サミットに問題解決能力がなくても,それは仕方がないと思う。サミットの使命は,ビジョンを示すことのように思う。2050年にCO2半減ということで合意できたのなら,それは十分な成果ではないだろうか。問題は,我々がそれをどう実現して行くか,ということである。

 サミットの会場では,環境対応車の展示と試乗会が行われていた。筆者はあるメーカーの電気自動車を運転しながら,隣に座る説明員に聞いてみた。「電池の開発が一番難しいのでしょう。技術を囲い込まないと,あとで大手に(市場を)取られちゃうんじゃないですか」。「いやいや,そんなの問題じゃないです。(電池の)値段が高すぎて。それが最大の問題です。できるだけ多くのメーカーに使ってもらって,値段を下げない事には・・・」。

 100km程度を走る軽四型電気自動車で,300万円ぐらいするという。そのうち200万円ぐらいが電池の値段である。これでは普及しない。普及しないと,急速充電ステーションなどのインフラも整備されない。技術的な完成度は高いのに,コストの壁で実用化できなかったものは過去にいっぱいある。

サミット会場付近で実際に郵便配達業務に利用されていた電気自動車
サミット会場付近で実際に郵便配達業務に利用されていた電気自動車 (画像のクリックで拡大)

 政府や自治体による補助金制度も重要だが,大手レンタカー会社やカー・シェアリング会社,宅配業者,郵便局などによる大量導入といったボトムアップ型の市場活性化が電気自動車の実用化にはぜひ必要だろう。しかし,それにはお金がかかる。そんなところにこそ,市民株主の資金が投入されるべきではないだろうか。草の根型の資金援助があれば,実用化の初期段階に立ちはだかるコストの壁を乗り越え,自律的な成長市場に移行できるだろう。いや,もうとっくにそういう経済システムが動き出しているのかもしれないが。