ある大手家電メーカーの商品企画部門で超高級掃除機を作ろうということになった。責任者はさっそくあるチームに「50万円の掃除機を作ってみろ」と命じた。しかし、いくらたっても案が出てこない。そして結局、チームは白旗を挙げる。「いろいろ頑張ってみましたが、頑張っても30万円にもとどきませんでした」と。聞いてみたところ、こんな方法で高額化を試みたのだという。まず、ブレーンストーミングとかで、とにかくやたらめったら色々な機能を挙げてみる。その実現可能性を技術的に検討し、できそうなものをふるい出す。その機能付加分を製造コストに換算し、それを積み上げていく。それでも50万円には遠く及ばない。だから、何度もそれを繰り返してあらゆる機能を詰めに詰め込んでみたけど、やはりどうしても50万円には届かなかったのだと。

 それも一つのやり方だけど今回は違うのでは、ということで、なるべくとんでもないことを考えてみよう。

日本だったら黒でしょ

 まず、外観上大きなポイントになる塗料だが、日本なんだから漆にしてしまう。色は黒。日本人の黒い瞳(エボニーアイズ)や黒髪は、欧州の人たちからみれば日本人の象徴だし、大きなチャーム・ポイントであるはずだ。ジャポニスムが大きなブームになった今世紀初頭には、欧州の女性が髪を黒く染めてショートボブにカットするのが流行ったらしいし。そうそう、パリとかでも著名な川久保玲さんの洋服も、基本は黒である。古くは千利休が「黒は古き心」とか言ってとても好んだなんていう話もある。そうだ、黒こそ日本の色である。それにしよう。色鉛筆は芯と同じ色に塗装するのが定石だけど、あえて全部黒にしてしまう。色は先の方に1cmほどの幅で入れておけばよい。

 木とかにもこだわりたい。とかでもそうだけど、日本の木工芸品では木目を合わせるということを頻繁にやる。複数の板材などを接いで使うときは、同じような間隔の木目の木を選び木目の方向を揃えて接着するのである。木目を生かした工芸品が多い日本ならではの神経の使い方である。鉛筆にも、ぜひそんな細やかさを取り入れたいところだ。