私の専門の一つは自律分散システム論である。ここでは,数がものを言う。大量生産のように多ければ善という単純なものではなく,数に応じて性質がどのように変わるかを研究している。難しく言えば,定量的な分析と定性的な分析の融合である。そのような研究の一環を,本コラムでも「人生は二社調達」として「1」と「2」の違いを紹介した。今回は,「2」と「3」の違いを説明したい。
ここでは,女性問題を例にする。真面目な技術者が読者であるので,女性問題を取り上げるのには少しちゅうちょがある。しかし,数が変わると,問題の質が大きく変わる好例であるので勘弁していただきたい。同時に,女性の方は一般性を失うことなく,性別を入れ換えてお読みいただければ幸である。
一度に何人の女性を愛するかという人類普遍の課題である。読者諸氏のように一人の女性を愛し続ける。OKです。素晴らしい。それは死ぬまで続けて欲しい。これが「1」という世界である。
しかし,偶然が重なって,または魔が差して,または意図的に,別な女性が読者諸氏の人生に入ってくることがある。「2」の世界である。多くの方が,日をずらしたり,時間を変えたりして,二人とお付き合いすることになる。リアルタイム分散処理である。これが難しい。一人を満足させるだけでも難しい。それが二人である。後処理や前処理の不手際,それよりも見過ごされたメモリーリーク。多くは破綻する。特に初心者は常に破綻を経験する。
破綻,それは二人の女性が互いに相手の存在を知ることである。貴方に二人の女性が迫る。「どっちをとるの!」。優柔不断は罪。選択の機会が与えられているのに,どちらの選択も新たな不幸の始まりである。一人を選べば,残りと刃傷沙汰になるかもしれない。いやいや,そこで丸く収まっても,選んだ相手に一生,「浮気した」と詰まられることになる。もちろん,自分が犯した罪,一生を使って償う覚悟があれば平和になれるかもしれない。
ところが,男性の中には別な選択をする方もいらっしゃる。減らさず,増やす。それが「3」である。具体的には,もう一人とお付き合いすることである。この「2」から「3」に変わることで,大きく問題の質が変わるのだ。女性2に対し,貴方一人。女性3に対し,貴方一人。実は,三人のほうが貴方には楽なのである。なぜなら,女性にとってみると,敵が一人なら貴方の選択に任せる。ところが,敵が二人になってくると,女性自らが動かなければならなくなる。三人の関心は貴方よりも,ほかの女性に集中していくのだ。例えば,誰と組んで誰を追い落とすか,あるいは一網打尽にするにはどうしたらよいか。三人の女性の争い。貴方は無風となる。おめでとうございます。
そして三人が二人になったらどうするか? 簡単です。また新たな人を連れてくればOKです。通常「3」以上は同じ。同時に4人も5人も付き合っていれば,「こんな男に惚れたお前らが悪い」と居直れます。
以上,「1,2,3の原理」,お分かりいただけたでしょうか。もっとも,実は数を増やすことは,この場合は問題先送り。真面目な技術者諸君は,人生を知っても真似はしないように。ただ,仕事も人生も柔軟な思考あってこそ楽しめる。押して駄目なら,引いてみろ。技術をテンコ盛りにして行き詰まったら,引き算を。逆に引きすぎたら,足し算を。何事も塩梅(あんばい)である.