国内生産の最後の役割ですが,それは,日本生産そのものの国際競争力の向上です。もちろん,日々のトヨタ生産方式に基づく改善努力を行うことで,競争力を高めている部分はあります。一方で,昨年高岡工場なのですが,ちょうど工場が老朽化してきたということもありリニューアルを行いました。個々の設備の老朽更新というレベルではなく,プレスやボデーの塗装,組み立て,さらには工場の中の物流,生産過程のしくみなど,ほとんど全部を我々が考えている最新の生産技術,あるいは生産のしくみを取り入れ,どのような工場になるのかを検証しました(図1)。

更なる革新技術の推進

 高岡工場はメインがカローラとヴィッツの製造を担当しています。そこでコンセプトは,コンパクト車で品質・コストNo.1,ということで,1機種でコンスタントに年間25万台の生産ができる,それを8車種混流でできる,というラインを造りました。先ほど言ったように,コスト以外にも工場の管理とか環境とか物流といった項目で,これまで我々がやってきた技術を集大成して,日本の競争力を上げる。それと同時にここでふるいに落として定着した技術を海外に展開していく。

 このように我々の技術の一つのショーウィンドウ,と言ったらおかしいですが,どこまで我々が実践できるのかということを,実際にトライしていく。海外の新工場で初めてぱっと導入するのではなくて,日本で実践して日本の競争力を上げると共に,その技術を海外の工場に展開していくことを行っています。

自然と調和する工場を世界に展開

 

また,国際競争力とはちょっと視点が違うのですが,2007年夏には「サスティナブルプラント」活動というものを発表しました。これは,自然を活用し,自然と調和する工場を目指していくものです。これには大きく3点の取り組みがあります(図2)。

『サスティナブルプラント』活動

 一つは,革新技術導入とカイゼンにより,飛躍的な環境パフォーマンスを実現すること。何を言っているのかというと,排ガスの少ない,あるいは生産のための消費エネルギの少ないラインを作る。そうすることで環境負荷を下げる。もう一つは,太陽光,あるいは風力などの再生可能な自然エネルギや,バイオマスなどの再生可能エネルギを活用して,CO2を削減すること。三つ目は,工場の森づくりを通じた,地域貢献,そして生態系の保護です。こういった三つの観点で,どのようなことを実践したらいいのかを考えています。

 ちょうど日本では堤工場が,プリウスを生産していることから,このようなことをトライするにはふさわしいのではないかということで進めております。また海外でも,アメリカ,ヨーロッパ,アジアにおいて,モデル工場としてぜひやらせてくれ,という工場が四つほど出てきています。各地域のモデル工場には,我々のノウハウをすべて横展開したサスティナブルプラントということで,非常に環境に優しい生産を行っており,まわりまわって我々の国際競争力に貢献すると考えています。