そこへ、デジタルテレビがやってきた。地上デジタル放送を受信するためには専用のアンテナ、もしくはケーブルテレビのデジタル化が必要になる。そのことが、こんなにも長くデジタル化を避けてきた主な理由だ。

 「最後の一本の藁(わら)がラクダを潰す」などという喩えもある。もう一つわが家のテレビ・スパゲティに何かを付け加えたら、コードはミッション・インポッシブルのように導火線と化し、発火し、爆発する。いや爆発はしないだろうが、配線の複雑さに自分がまいってしまうだろう。

 ところが、さる週刊誌の企画で最新型の液晶テレビが家に届いてしまった。40インチだというのに、箱の大きさは麻雀卓ほどもある。「まず映らんだろう」と決めてかかりつつも、映すべく努力はしなければならない。渋々、ケーブルテレビ会社に電話してデジタル化の手続きをしたが、無料電話ということで接続までやけに待たされた挙げ句、今できるのは「見積もり」だけで、映るようになるのは2週間後だという。それでは締め切りに間に合わないではないか、ということでケーブルテレビ経由で視ることはあきらめ、直接受信すべくアンテナ工事を頼むことにした。

 インターネットで近所の電気屋さんを探して電話をする。でも、どこもお母さんがでてきて、旦那は留守だという。町の電気屋さんはめっきり減ってしまって、残った店はどこも忙しいのだろう。郊外の大型店が強いから・・・・・・。いや、待てよ、その郊外の大型店でアンテナを買えばいいじゃないか。

 ということで、みんなが知っている大手量販店の工事部に電話した。すると、「明日の朝OKです」などという。「いや、明日の朝なら伺えますがそれ以外だと1週間後になります」ということらしい。

 翌朝、電気屋さんは現れた。その時、私はまだ布団の中だったけど。おばあちゃんに起こされ外に出ると、彼はわが家の外壁を眺めている。「ケーブルテレビでインターネットを利用されてますか? いえ、あまり分配が多いと別個に分配機が必要で2万3000円かかるんですよ」と値段表を広げる。1万7000円の工事のはずがいきなり4万円! なんとうさんくさい。