財務省や金融庁など9省庁の役人が深夜にタクシーで帰宅する際、運転手(おそらく個人タクシー)から「ビールやつまみ」の提供を受けていたことが問題となっています。なかには、現金を受け取った例もあるようで、タクシー料金がキックバックされていたようです。これはもはや犯罪でしょう。悪いことは悪いこととして、問題を徹底的に洗い出す必要があります。

 確かに役人はよく深夜タクシーを利用します。私は1986年から1999年まで、通商産業省、現在の経済産業省に在籍しておりました。正直、仕事としてはいい経験をさせていただきましたが、あまりいい思い出がありません。なぜならば、残業ばかりしていたからです。当時の通商産業省は、「つうじょうざんぎょうしょう(通常残業省)」と呼ばれていました。新人の頃は、頻繁に独身寮の仲間と時間を調整してタクシーで帰宅していました。

 きっとこの状況は変わっていないと思います。居酒屋タクシー問題が明るみに出たことから、さらにエスカレートして「そもそも役人が深夜タクシーを使うこと自体がおかしい」という指摘があります。もちろん、おかしな使い方はあるでしょう。けれど、ある部分だけをみてすべてを否定することの悪弊も考えなければなりません。それ以前の問題として、「なぜタクシーを使うのか」を知っておく必要があるのではないでしょうか。今回は、自身の経験を基にその実態についてお話ししたいと思います。

待つだけで深夜になる

 役所での仕事であまりいい思い出がない理由のひとつに「異常な拘束時間」があります。今思うと、私はこの役所にあまりにも長時間縛られるのがいやで大学に移りました。

 ちなみに、私の経験ですと役所の残業の原因は大きく三つあります。

法案の作成
予算案の作成
国会質問待機

 法案の作成はやはり大変です。いろいろな部署から若手が駆り集められて、チームを作り、「タコ部屋」といわれる法案作成作業室で法案作成を行うのです。条文を書くのに内閣法制局と調整し、一字一字ごとに関係する省庁と調整しなければなりません。

 私が環境関係の法案作成に関与した時は、半年で二日しか休みをとれませんでした。土日も役所に通っていたのです。すさまじい残業時間でした。ただこのときは、法律を作ったという達成感からか、残業がいやだとは感じなかったのですが。