メーカーは,寿命が長いので1個1000円でもお得です,と言っているようだが,消費者心理的には抵抗が大きい。一方,長年,1個80円の利益率の低い白熱電球を生産してきたメーカーにとっては,盆と正月がいっぺんに来るような期待感でいっぱいだろう。各社とも近々,白熱電球の生産を中止するなどと発表して,意気軒昂である。

 結局,我が家では常時点灯の60W電球,4個を置き換えるだけに終わった。蛍光灯は消費電力が1/4~1/5なので,6時間使用したとして,1日に1kWh程度の節約になる。年間では365kWhとなり,これに東京電力のCO2排出係数0.34(kg/kWh)を掛けると,我が家のCO2排出量を約120kg(4人家族なので1人当たり30kg)削減してくれることが分かった。ちなみに日本人1人当たりのCO2排出量は年間約10トンなので,0.3%のCO2削減となる。これはすごい。たった電球1個(4人で4個)で。

中国のエネルギー環境事情

 先日,中国の政府系シンクタンク,中国国家発展改革委員会能源研究所の戴彦徳副所長の講演を聞く機会があった。大変早口な方で,通訳を待たずにスライドがどんどん進んでいくのでメモを取りきれなかったが,主旨はよく理解できた。ちなみに,講演の冒頭で「地球温暖化問題は,米国と中国の協力なしには解決しません」と声高に宣言されたのには,内心ほくそ笑んでしまった。失礼ながら世界の2大環境汚染国の一方の当事者から,いきなりそんなことを言われるとは思わなかったからだ。

 以下,戴氏の話を要約する。「中国は急速な経済発展の過程にあり,古い設備でエネルギー多消費型の工業製品を作っている。GDPだけを見ると世界4位と大国の仲間入りと言えるところまで来たが,一人当たりGDPは2000ドル程度しかない。都市化率は50%以下である。エネルギー源を石炭に依存しており,都市の1/3は汚染された空気にさらされている。農村部は,いまだに薪柴(しんさい)しか使えず,生態系を破壊している。中国はまだ経済発展の途上にあり,CO2排出削減の義務はないと思うが,(地球温暖化の)問題はよく自覚している」。

 経済発展は続けているが,まだまだ国は貧しい。先進国は一人当たりGDPが2万~3万ドルで,中国の2000ドルは世界の100番目ぐらいである。先進国が高度な技術やソフトウエアで高付加価値製品を作っているのに対し,中国の代表的輸出製品は70億足の靴と5億個の電源アダプターである,などと述べたあと,中国の未来について次のように語った。

 「今後,私たちは何段階かの発展を経て,2050年にやっと世界の中進国の仲間に入れると考えている。しかし,その時には中国の人口は15億人に達しており,一人当たりのエネルギー消費量をかけ算すると,60億トンの石油が必要になる。そのためには,地球が二つ必要になるということが分かった。もちろんそれはあり得ないことなのだが,今現在,私たちはそういう方向に向かって進んでいる」。このブログの1回目でも触れた話である。