「なんともなりませんな」と喉まで出かかったが、それじゃあプロの名が廃るということで思い直し、ともあれクリエイティブ・シンキングの社員教育メニューを設計してみた。それが何だかよくできているのである。意外といけるかもしれない。O氏に独り占めはもったいないということで、みんなに教えてしまうことにした。

 飲んだ翌日、O氏にメールしたメモの内容はこんな感じだ。

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 考えるプロセスは大きく分けて2つある、「拡散と収縮」だ。

 すべての既成概念を無視してアイデアをたくさん出すのが拡散、会社にとって必要なアイデアを選抜して論理的にまとめあげるのが収縮だ。

 クリエイティブ・シンキングの優れている点は自然に思いつく閃きに頼らず、情報を集めてからアイデアを創出する技術とプロセスを定義付けていること。これによって能力のあるなしに関わらずある一定のレベルのアイデアを予定した時間内に社員が出せることになる。

 一番知られているのがブレーンストーミングだが、これまではあまり日本の企業ではうまく効果を出せなかった。たぶん、ピラミッド組織の「上には絶対服従」という古い会社風土の下では、自分の意見を言う奴は、しょせん出る釘に過ぎなかったのだろう。しかし今は他社にない新商品を出さねば生き残れないオンリーワンの時代である。「何がなんでもアイデアを出せ」という大号令が発せられ、上は部下の顔を見るたびに「とにかくヒット商品のアイデアを出せ出せ出せ」と発破をかける。社員の評価だって変わった。ブレストだろうとなんだろうと、自分の意見だろうとパクりだろうと、手を上げて突拍子もないことを機関銃のように発言する社員がよい社員という風に、評価は180度変わったのだ。つまり、「昔はダメだったけど今はいい」、つまり今になってようやくブレストが成り立つ時代を向かえた、ということになるだろう。

 いまさらブレストかよ、とか思うだろうが、これが組織的発想の基礎であることに変わりはない。その基礎さえできない状況で、他の方法なんかできるはずもないのだから。社内の雰囲気が変わった今こそもう一度、この基礎に挑戦してみるのがいいだろう。

 ブレストの基本的なやり方は、(1)あらゆる条件を無視して思いつきをたくさん述べる、(2)アイデアを同類項でくくりキーワードをつける、(3)それぞれのキーワードから最も企業利益に合致したキーワードを創出する、といったものだ。