米Apple社が2007年6月に発売した携帯電話機「iPhone」は,出荷台数をみるとそこまでヒットしたとはいえない。2008年3月末までの約9カ月で,累積出荷台数は540万7000台2007年の総出荷台数が11億台を越えた世界の携帯電話機市場では微々たる存在である。

 だからといって,iPhoneを「時代のあだ花」と片づけてしまうのは早計だ。iPhoneの真価は,ユーザーの行動の変化に現れている。iPhoneのユーザーは,携帯電話業界の常識からは考えられない水準でインターネットを利用していることが,徐々に明らかになってきた。2007年8月,米Google社はiPhone発売後に携帯電話機からのアクセスが大きく増えたと指摘。2008年2月に同社は,Financial Times紙に対して「iPhoneからの検索数は,他の携帯電話機と比べて50倍多い」と語った。Google社によれば,携帯電話機からの検索数がパソコンなどによるそれを数年以内に上回る可能性があるという。海外での報道によると,iPhoneを提供する英O2社ドイツT-Mobile社は,インターネットの利用の増加にうれしい悲鳴を上げているようだ。

 それまで海外,特に米国では,携帯電話機によるインターネット・アクセスはそれほど盛んでなかった。カナダResearch In Motion社の「BlackBerry」をはじめとする「スマートフォン」が人気を集めていたものの,電子メールのやりとりなどが中心だった。iPhoneは,この状況を一気に塗り替えた。携帯電話機がインターネット端末になる時代の到来を,高らかに告げたのである。