潜在市場は100億米ドル

 Eee PCは皮切りにすぎない。今後,同様な機器の市場は大きな成長を遂げる可能性がある。パソコン業界の期待は大きい。Eee PCのように,ディスプレイが7型以下でネット接続を主要な用途とするパソコンとして,UMPC(Ultra-Mobile PC)にNetbook,MID(mobile internet devices)といった名称が使われるようになってきた。名付け親の1社である米Intel Corp.は,それぞれの潜在市場を今後5年間で100億米ドルと見積もっているという。2012年までにMIDの世界出荷台数が9000万台近くに達するとみる市場予測もある。

 各社が期待するのは,ネットに接続する超小型パソコンが,携帯電話機のような製品に育つことである。携帯電話機は,いつでもどこでも音声や文字によるコミュニケーションを可能にすることで,個人に欠かせないツールになった。一人が一台,場合によっては複数台利用することで,瞬く間に莫大な市場を築いた。全世界での出荷台数は既に年間11億台を超えている

 ASUSTeK社のShen氏が指摘するようなネットの使い方も,多くの人にとって必要不可欠になるだろう。これからは,現在は書籍で読んでいる文章や,テレビで見ている映像が,確実にインターネット経由で届けられる。そのとき,既存の携帯電話機では画面が小さすぎ,ノート・パソコンでは持ち運びに不便かもしれない。だとすると,大きさが携帯電話機とノート・パソコンの間にある機器は,年間数億台の市場に育ってもおかしくない。

サービス基盤が充実

 Eee PCが爆発的に売れる背景に,インターネットの浸透があることは確実である。1990年当時,「メディア」を目指した日本メーカーには,インターネットもWWWもなかった。コンテンツとして,ICカードによる電子出版物を想定していたほどである。今では,新聞の代わりにWebサイトでニュースを読み,iTunes Storeで音楽を購入し,YouTubeでテレビ番組も見られる。アプリケーション・ソフトウエアまでが,ネットの「向こう側」にある。米Google Inc.の「Gmail」や「Google ドキュメント」などを使うと,パソコン側にはWebブラウザーだけあれば,電子メールやワープロの機能を活用できる。

 インターネットへのアクセス手段も多彩になった。今やほとんどのパソコンが無線LAN機能を標準搭載している。HSDPA方式のデータ通信を使えば,下り最大7.2Mバイト/秒のサービスを全国各地で受けられる。2009年には,下りの通信速度が数十Mビット/秒に達するモバイルWiMAX次世代PHSのサービスが国内で始まる。