——Eee PC 701は先進国の家庭での2台目需要と,新興国の教育需要に同時に応えるわけですね。ただ,低価格のニーズが強い新興国への販売で利益を出せるのでしょうか。

 インドでは,SSDの容量を2Gバイトに限定した機種を投入します。納入単価は200米ドルを少し超えるくらいです。でも正直なところ,これでは損益分岐点に達するのがやっとです。利益を得るのは主に先進国市場になるでしょう。出荷台数で見ても先進国向けが6~7割を占めそうです。残りは新興国の教育現場と,通信事業者向けになります。通信網の設備管理に使いたがっている通信事業者がいるんですよ。

——Eee PC 701のように安価なパソコンの市場は,今後どのくらい成長すると予測していますか。

 質問に完全に沿ったデータは持ち合わせていませんが,それに近いものをIntel社が予測しています。液晶ディスプレイの画面寸法が7~10型で,ストレージ容量が2G~20Gバイトの小型で低価格なノート・パソコンに関する市場予測です。

 こうしたノート・パソコンの市場は,Eee PCやOLPCのXOなどを合わせても2007年時点ではごくわずかですが,2008年には世界で1000万台にほぼ確実に到達します。当社が500万台出荷する計画ですし,米Hewlett-Packard Co.や台湾Acer Inc.(宏碁)がEee PC対抗機を出すでしょうから。この後も低価格なノート・パソコンの市場は高成長を続けるでしょう。毎年市場規模は2倍になり,10年後の2018年には10億台に達する可能性があります。

——2台目需要について再度伺います。何を重視して商品を設計すべきですか。そのためには何が必要でしょうか。

Jerry Shen, ASUSTeK Computer Inc.,President
(写真:栗原 克己)

 対象ユーザーとなる主婦や子供は,一般にパソコンは難しいと敬遠しがちです。日本市場向け以外ではOSにWindowsより低コストなLinuxを採用したのですが,そのままではユーザーがキーボードでコマンドを打ち込まなければなりません。

 そこでカナダXandros Inc.と共同でグラフィカルなユーザー・インタフェース(UI)を開発しました。当社では150人ほどが開発に当たりました。UIは,大規模なテストの結果を反映しています。試作機を1000台用意し,従業員などに配布。家庭でおじいちゃんから子供まで使ってもらい,ユーザー・テストの結果を反映しました。

 ただし,一番重要なのはUIではありません。商品全体がもたらす体験です。消費者に割安と感じてもらえる価値を提供することです。例えばACアダプタや通信モジュールといったアクセサリーについては,外観デザインや使い勝手に気を配りました。さらに,家で使うのですから騒音をまき散らしていてもいけません。騒音の音圧は25dBほどと,極めて小さくしました。もちろん外観は安っぽくなく,小型でスタイリッシュでなければなりません。