酒巻 久 氏
写真:佐藤 久

 我々が最も力を入れているのは「失敗・成功事例集」の作成と,それに基づく勉強会です。この事例集には,どんな失敗でも必ず書き込む。書いてくれさえすれば,マイナス評価はしません。逆に,良い事例を書いてくれた場合は評価するというのがルールです。製造現場が一番やってはいけないことは隠し事です。マイナス評価をしないことで,隠す必要がなくなります。

 失敗・成功事例集の中で特に重要なことは,なぜミスや失敗が起きたかという原因を解明することと,なぜそれを直属の上司が事前に見抜けなかったのかを明らかにすることです。この二つをしっかりやれば,ミスや失敗の再発を防止できます。逆に失敗事例の報告で,この二つが不十分だと書き直してもらいます。私自身が書き直しを指示します。

 そして,この事例集を基に1週間に1回程度,部署ごとに勉強会を開きます。一つの勉強会には10~20人が参加します。開発部門の勉強会は工場の事例が中心というように,他部門の失敗がなぜ起きたか,またなぜ防げなかったかを話し合います。

 失敗事例の勉強会というと,なんだか他人のアラ探しみたいな印象があるでしょうが,我々の場合は至極リラックスした雰囲気のものです。仕事ではないので飲み物やケーキなどの飲食は自由。経費は会社が負担します。あとは好きなようにやってくださいということですね。業務としての会議だと,自由な議論がなかなかできません。